マジカルメイド ホワイトピアニシモ なちゅらる





マジカルメイド ホワイトピアニシモ なちゅらる
第3話  「大人になりたい? 幼女になりたい? 
恋する乙女の苦悩」



 気象衛星「あじさい」のさらに上に堂々と佇む悪趣味な宇宙船。
 地球征服(と幼女保護)を悲願とする宇宙怪物集団、「アルティメットロリ」。
 その巨大な宇宙船は、およそ地球科学などあと数十年、いや数百年かかろうと追いつけないであろう超文明の産物である。
 主砲を地球に向ければ、ものの数発で国ごと焼き尽くせるであろう。
 あるいは船ごと地球に降り立ったのなら、まさしく神話や伝承に数多くある終末の日を明日にでも現実のものとしてしまうに違いない。
 だが、彼らは決してそんなただひたすら武力に訴えるような真似はしない。
 もちろん地球制服が目的ではあるが、それは宇宙でも随一の美幼女を擁する星だからだ。
 いたずらに兵器に頼り、幼女を傷つけるような真似だけは死んでも出来ない。
 彼らの信念が許さない。
 彼らがロリコンであったがために、地球は訪れるはずであったハルマゲドンを幸運にも回避していた。
 そして彼らが兵器に頼らない理由はもう一つあった。
 彼らは各々が誇り高き戦士である。ロリコンだが誇り高い。いや、ロリコンだから誇り高い。
 自分こそが宇宙最強のロリコンだと自負する屈強の戦士たち。アルティメットロリはそんな豪傑の集まりでもあるのだ。自分の腕を頼る彼らは、兵器などという無粋なものに頼ろうとはしないのだ。

 宇宙船内の大ホールから異様な雰囲気が発散されている。
 眉目秀麗のロリコンが、たおやかにクラシックを奏でる。もちろん、地球のものではない。
 母星に古くから伝わる、ロリコン達の魂を癒し、そして闘争心を高める、静かで力強い曲だ。
 今日は、幹部達が一同に会し、定例会が開かれていた。報告と今後の対策についてだ。
 まずは報告。各々が得意げに武勲をひけらかしている。
「ええい、女のようにちまちまとうざったい……もっと男らしい逞しい報告は無いのか!!」
 片目を刀傷で失った巨漢の男が、それまでに発表された下位戦士達の報告を一笑に伏す。
「俺は都内全ての幼稚園に出撃、選りすぐった幼女達にネコ耳を装着してまいった。来週中には、関東全域を同様に変えられるであろう、フ、ハハハハハハハ!!!」
 おおおおお……、とその場にいる者たちがどよめき出す。
「ぬ、ぬう……し、しかし! 人間どもにも大きな動きがあるというではないか! いかな十二神といえども、これは梃子摺るのではないのかな!?」
 立場は下だが見栄張りの幹部が、虚勢でその意見に反論する。
 だが、その漢はいささかも動じなかった。
「戯けた事を……人間如きの軍隊、どれだけ集まろうと物の数ではない!!」
「ぐっ……」
『さすがよな……ロリ十二神の一人、キワメテロリよ』
 ホールに威厳のある声が響き渡る。
 アルティメットロリの首領、彼の直々の労いに、さしものキワメテロリも襟を正し、居住まいを直し跪く。
『ロリ四天王が全てピアニシモに倒され……我らも気を引き締めねばならぬ。だが、お前達十二神がいれば、事も順調に運ぶであろう』
「勿体無きお言葉……ありがたき幸せ」
 最高の栄誉である首領からの言葉に、キワメテロリも高揚感を抑えきれないようだ。
 しかし、そんなキワメテロリを尻目に、突如立ち上がり、マントを翻す男。
「フッ、確かに見事だ……が、君はいささかエレガントさに欠ける」
 黒淵眼鏡をかけた長身の男が、彼の一人舞台にまったをかけた。
 同じロリ十二神、ソコナシロリだ。
「私は都内はおろか、関東・関西全ての18禁PCゲームメーカーに出向き、今年度より発売される全てのゲームの登場人物を幼女に限定するよう洗脳。もちろんけしからぬ逃げ口上など使わせる気は毛頭ありません。オープニング全てに、”この作品に登場する女の子はすべて12歳以下です”という書き文字を挿入させました」
「むう……」
 苦虫を噛み潰したような顔になるキワメテロリ。
 それを見て気をよくしたのか、さらに話は続く。
「それだけではございません。オープニングアニメも表記をオーぷにングと改めさせましてございます」
『ほう……!』
 首領もこれには感嘆の声を上げた。
「な、なにい!!」
 とうとうキワメテロリが立ち上がって声を張り上げる。
「き、貴様……!!」
 ソコナシロリの横顔に「してやったり」といった優越感を見て取ったのか、キワメテロリが今にも飛び掛らんばかりに激情を露わにしている。
「フッ……私としては同じ十二神同士、あえて覇を競う必要もないと思っています。そう鼻息を荒くなさらず」
「くう…………ふ、ふんっ!!」
 まだ定例会は終わっていないが、キワメテロリはその場を後にした。
「やれやれ。これからが、今日の会議の本番だというのに、困った人だ」
『だがソコナシロリよ。お前のその斬新さも素晴らしいが、キワメテロリのような昔気質の男も、組織には必要なのだ。私はあの男の一本気を買っておる。あまり高く止まってはならぬぞ』
「ええ、心しております。私とて、彼は尊敬していますよ」
 力に頼れない分、知略で戦わなくてはならない。ソコナシロリの敬意は本心だった。

 そして、いよいよ重要議題、これからの対策について議論が始まる。
 自分達の計画の障害――――――マジカルメイド達についてだ。
 達、とはいっても、脅威なのはホワイトピアニシモ一人。正直、ブラックフォルテシモの方は戦闘力はさて置き大した障害とは認識されていなかった。
 スクリーンに、地球最高の幼女の姿がまざまざと映し出される。
 ホールが割れんばかりの歓声に包まれた。
「静まりなさい! 首領様の御前で見苦しい!!」
 ソコナシロリが一喝し、静寂が戻る。
「まあ、確かにこの全宇宙随一の美しさを誇る幼女……気持ちは痛いほど分かります。しかし、彼女は敵なのです!!」
 テーブルをだん、と叩き、口惜しそうに歯噛みするソコナシロリ。
「その通りだよ」
 立ち上がったのは、女と見紛う程の美少年。だが、肌の色といい、声といい、彼はどこからどう見ても人間だった。
「忘れないで。僕達の同胞の多くが彼女に倒された。交渉も、懇願も悉く拒絶された。彼女は、倒さなくちゃいけない敵なんだ」
「フン、人間風情が偉そうに」
 下位戦士の一人がその少年の演説に悪態をつく。
『戯けめ。ライは私も認める立派な同胞ぞ。貴様のその言葉、私への侮辱と取るが、よいか?』
「その通りです。ライは私たちと同じ十二神。君如き雑兵がそんなくだらない陰口を叩く権利は無い」
「い、いえ、滅相もございません!! 失言でありましたああああ!!!」
「あ、いいんです。でしゃばった真似をしたかもしれません……」
『ライよ。お前は実力はあるがその自信の無さが枷になっておる。もっと覇気とたゆまぬロリ萌えをもって行動するがよい』
「は、はい……肝に銘じておきます」

 ピアニシモへの具体策が見出せぬまま、会議は定時を持って終わった。
 国府田雷は、溜め息をつきながらホールを後にした。
 怪物じみた様相の中にあって、彼だけはごく普通の人間だった。そのせいでまだまだ無言の差別を感じる。
 同じ十二神達は、彼の事を認めてくれるようになった。しかし、下の者になるほど監視が行き届かないものだ。
 共に戦場に立った者と分かち合える友情も、何も知らぬものには伝わらないものだ――――――。
「お疲れ様、らいちゃん」
 少女が駆け寄り、スポーツタオルを渡す。
 何故会議をしただけなのにタオルなのかな、と疑問に思ったが、どうも運動部のマネージャーじみたシチュエーションに酔っているようなので、黙って受け取った。
 並んで立つと、雷よりもその少女の方が若干背が高い。
 もちろん、少女が大柄だというわけではなく、同じ年頃の男の子と比べ、雷が小さすぎるのだ。
 少女……赤坂なるは、雷に歩幅をあわせながら、不安そうに彼の顔を覗き込んだ。
「か、会議……ちゃんと終わったの? 大丈夫だった? いじめられなかった?」
「当たり前だよ。でもやっぱりみんなすごいや。一応十二神のポジションは貰っていても、僕はまだまだ下っ端の頃と変わらないよ」
「そんな事無い、らいちゃんは頑張ってるよ。……っていうか、ロリ方面では頑張らなくていいんだけど……」
「でも、僕が偉くなれば、なるちゃんもみんなにもっと仲良くしてもらえると思うから」
「らいちゃん……!!」
 あの変態たちに仲良くしてもらいたいとは枝毛の先ほども思わないが、この優しさがたまらなく胸を打つ。
 国府田雷と赤坂なる。彼らは、10年前、アルティメットロリの尖兵が地球に降り立った際孤児院から丁重に招き入れられた(という名の誘拐をされた)孤児だった。
 ちなみに雷は当時幼女にしか見えなかったため連れてこられたのだが、その間違いに気付くまで3年かかったので今さら出て行けとも言えず、雑用として働きながらその忠誠心をかわれついには十二神の称号を与えられたのだった。アルティメットロリの面々は何だかんだといいながら信義には厚い。
 アルティメットロリに属しながら、彼らは普通に高校生として生活していた。
 なるは家庭訪問などの度に言い訳で胃が割れそうな思いをし続けてきたが、雷はあまり気にしておらず、素性がばれる事も厭わない世間知らずだ。
 そのためなるの苦労は絶えず、事あるごとに雷を庇い続けてきた。
 弟のように面倒を見続け、幼馴染として、たった一人の理解者として物心ついたときからずっと一緒に育ってきた少年。それが愛に変わるのは何も不思議な事ではなかった。
 なるはこの変態組織にあって、普通の人間として、普通の女の子として、いつしか雷に恋していた。
 だが、雷はいつまで経ってもそんな自分の気持ちには気付いてくれず、関係は幼馴染のままだ。
 そして、彼への想いを大っぴらにできない決定的な理由もある。

「でも、みんな、どうしてなるちゃんには優しくしてくれないんだろう。僕ですら、認めてもらえてるのに」
「それは……ここの奴らがみんな、ロリコンだから……」
 男ばかりの組織にあって年頃の女一人、しかし、ある意味貞操の危機は100%ありえなかった。
「待っててね! なるちゃん! 僕も早く、一人前の、立派なロリコンになって、首領様やみんなにもっと認められてみせるから!!」
「な、ならなくていいよぅ……」
「なるちゃんも頑張って、僕と同じ十二神になろうよ。ショウガイロリさんが、後釜ができたら引退したいって言ってたから。もう歳で戦闘はきついんだって」
「ん……」
 自分のために頑張ってくれている雷を見ると、涙が出るくらい嬉しく、心が熱くなる。
 反面、自分のために頑張る、組織に尽くすという事は真性ロリコンへの覇道を歩むという事。この、乙女心と人としての良心のアンビバレンツに、なるは常に悩まされ続けていた。
「あ、あのさ、らいちゃんが私に優しくしてくれるのって、その……」
「だって、なるちゃんは、僕の大切な幼馴染じゃないか!」
「あ、うん、そうだよね……私たち、幼馴染だもんね……」
 がっくりと肩を落とす。返って来るのはいつも、予想を遵守し期待を裏切るものばかりだ。
「疲れちゃったな。お風呂入ってくるよ。なるちゃんも一緒に入らない?」
 肩を回しながら、平然と恐ろしい事を言ってのける雷。
 なるは頭から足の先まで一瞬で紅潮させそれを否定する。
「だ、だ、だ、駄目よ! 恥ずかしいし!!」
「え、そ、そう? なるちゃん、最近ずっと一緒に入ってくれないよね……僕のこと嫌いになった?」
 子犬のような目で訴えてくる雷に、あっさり心が折れそうになる。
 母性本能が核爆発し、小脇に抱えて風呂場まで走り、思いっきり一緒に入浴したくなる衝動に駆られる。
 なるは口の中で思いっきり舌を噛んでその誘惑に耐えた。
「ちちちち違うの、言ってるでしょう、小学校を卒業したら、男女はもう一緒にお風呂に入っちゃいけないの。結婚しない限り駄目なの。法律でそう決まってるの!!」
「法律……?」
 決定的な理由……そう、この組織がロリコン集団という事だ。
 自分と雷が付き合えば、雷は幼女以外に心を許した裏切り者として厳しい処罰を受けるだろう。
 自分のためにと必死に努力し続け、ようやく得た今の地位も失ってしまう。なるはそれが怖かった。
「らいちゃんは世の中の事を知らなさ過ぎるの! いい、ここで教えられた事が全てだと思ってたら大恥かいちゃうから、ちゃあんと私のいう事守って、ね?」
「うん、僕、なるちゃんの事信じてるから」
「〜っ…………」
 雷の満面の笑顔に腰が砕けそうになるなる。
 今すぐ背骨が砕けるほど抱きしめ頬が削げ落ちるくらい頬擦りしたい衝動に駆られる。
 ややヒールの高めのローファーで反対の足の親指を力の限り踏み、その誘惑に耐えた。
「――――――」
 と、急になるの表情が険しくなった。
「ごめん、私ちょっと用事あるから、雷ちゃん、お風呂入ってて。上がったらご飯作ってあげる」
「うん」

 雷を見送った後、なるはまるで人が変わったように目を吊り上げ、廊下の奥に向かって殺気を開放した。
「そこのネズミ、出てきなさい」
「ひっ……え、ちょっと!?」
 十二神・ナミハズレタロリが怯えながら姿を現した。
「……今あんた、私たちにガンつけてたでしょ」
「つ、つけてません!! ちょっと見てただけです!! いや、何かいい雰囲気だなって……」
「それがつけたってんだよゴルァアアアアアアアアアア!!!」
 片手で襟元を締め上げ、そのまま壁に叩きつける。
 コンクリートの数百倍は強度があろうという超物質・アルティメットマターで出来た壁にはさすがにヒビ一つ入らなかったが、その代わり締め上げられた十二神の身体の内側に亀裂が入った。
「うびひいいいいいいいいいいいい!!!」
「……あんた、雷の事いじめてないでしょうね。いじめたら耳か鼻削ぎ落とすわよ」
「してません! してないッスよ!! 勘弁してくださいよ姐さん!! 十二神はみんな姐さんの味方ですよ!!」
「嘘……応援してくれるって言って、全然役に立たないじゃない!!」
「この前映画のチケットあげたじゃないっすかああ! デートしなかったんですか!?」
「ぷに系の幼女が大活躍するアニメの映画のチケットありがとーーーねーーーーー気まずくてたまらんかったわなーこれもう!!」
「ひいいいいいすいませんんんんそれが券屋で真っ先に目に飛び込んできたからああああああ」
 メキメキと不気味な音が廊下に木霊する。
 他の者はうっかり遭遇しても、見て見ぬふりをして、別の通り道を選んで避けていく。
 ……雷は、なるが疎外されている……正確には避けられている、だが、その理由を知らない……。






んじゃっじゃーんじゃじゃ!! もけけ!! んじゃーじゃ!!!
だらっだっだだだだーーーーーーーー!! だらっだっだっだだだだ!!!!
(主題歌前奏)

戦え! ロリメイド!!! (イカレポンチMIX)

歌:影○ヒ○ノ○(バックコーラス[()部分]:角○信○)


ロリ!! ロリ!! Oh,Roriー(ロリロリン)―――――――――

(ここでタイトルロゴが入る)



この世に変態がいる限りー(俺は違うぞ!!)
必ず舞い降りる正義のロリっ娘ーーーーーーーーーーーー
ヒラヒラメイド服がまーーーぶーーーしーーーいーーーぜーーーー!!(やべえ、まぶしい!!)

今日も悪者をお掃除! お掃除! Oh!掃除ーーーーーーーーー!!

バラバラ! ズタズタ!! コナゴナ!!
どれでも好きなだけくれてやるぜ!!(あたたたた!!)
命知らずはかかってきな!! 
幼女だからってナメんじゃねえ!!<シュッパーーーーン>←画面効果

胸はなくとも夢はある!! 尻が出ずとも蹴りは出る!!(フンッハッ!!)
地球のために変身だ!!(はぁぁぁ〜)

プニプニーーーーーーーーーメタモルフォーーーーゼッッ!!<ここだけ水○一郎の叫びで>

メイドの土産に見せてやるぜ!! 惑星破壊メイドクラッシュ!!<クルアッシュと巻き舌で>

地球の外まで飛んできな!! カチューシャが引導代わりだ!!(お前はもう死んでいる)

涙を武器に替えて今日もたーたーかーえー
マジカルメイドーーーホワイーートーピーアーニーシーモーーーーーーーーーー!!(ピピピピピアニシモッッ!!)

Ahーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!<やたらシャウト・角田もシャウト>







 下駄箱に靴を戻し、校門までの長い道のりを、三人の美少女(二人+一人の美幼女)が歩いていく。
 一見しようが舐め回す様に見ようが小学生にしか見えない高校1年生・音弥ましろ。
 そして、黒崎財閥の娘でましろのライバル(ましろ本人の嫉妬)……黒崎ひびき。
 彼女達二人と、自信なさげに歩くのは、赤坂なるだ。

 アルティメットロリとの半年に及ぶ戦いの末、ついにましろ・ホワイトピアニシモと、ひびき・ブラックフォルテシモは、組織の中核たるロリ四天王全員を撃破した。
 これで、あと一息で変態集団との戦いから解放されると意気込んでいた所へ、実はさらにその上に十二神という新幹部がいますと宣言された時のましろの落胆ぶりはひどいものだった。
 次の日片思いの相手・須高時也の笑顔を見たら元に戻る単純さがましろの長所だが。

「どうしたの? なるちゃん、元気ないね」
「う、うん……今日は、あんまり家に帰りたくないんだ……。ちょっと、あいつら特訓してて……変態ぽい」
「特訓?」
「ああううん、何でもないの。そうよそう、ましろちゃん、須高くんとはどうなの? もう告白した?」
 とてつもなく不自然に話題を切り替えるなる。
「し、してないよ〜! だって、須高君、ナイスバディな女の子が好みみたいなんだもん……ひびきちゃんと一緒に歩いてる時に会うと、ひびきちゃんに釘付けだし、それに、いいなあ、なるちゃんもかなりスタイルいいよね」
「あら、私から言わせれば、ましろさんに勇気が無いのが原因ですわ。仮に成熟した身体の女性が好みの殿方でも、真摯に愛を伝えれば必ず心を動かしてくれるはずですもの。でも、私が見たところ、ましろさんは何もしていませんわ」
「してるよ〜! いっぱい!! で、でも、何か妹がじゃれついてるように取られてるっていうか……」
「あ……」
 ましろの言葉に胸が痛むなる。立場が逆だが、まるきり自分と同じ境遇だ。
 自分も、幼馴染として、優しい姉としてしか、献身を受け止めてもらえない……。
「それに、ましろさん自身は素敵な女性になろうとする努力をしているんですの?
成熟した女性が好みだといいますけれど、殿方はそれで普通なのですわ。あの憎きアルティメットロリの変態どものように、幼い女性に愛を抱く方が間違い狂っているのですわ」
「……」
 返す言葉も無いましろ。牛乳をたくさん飲んだり、胸が大きくなるという怪しい通販グッズに手を染めたりしたものの、まるでそれが地球の意思だといわんばかりに、断固としてましろの胸は成長する気配がない。
 胸どころか、身体のいたる部分が小学生のまま時が止まってしまったかのようだ。いたる部分が。
 マジカルメイドに変身した反動かと考えもしたが、そもそもましろの無成長は半年前に始まったことではないし、ひびきは今だ着々とプロポーションに磨きがかかりつつある。
「諦めなよ。ましろちゃんは永遠にロリっ娘だよ」
「黙っててシュイーム!!」
「あれ? 今その人形……喋らなかった?」
「あわわわわ、気のせいだよ気のせい!!」
 半年の激闘を共にしたティーショピュー星の王子、シュイームも相変わらずましろの鞄にぬいぐるみとして括りつけられて揺れている。
 迂闊に声を出したお仕置きで、なる達に見えないようにガッツンガッツン蹴りを喰らわすましろ。

「それにしても、思い出すだけで胸が悪くなりますわ、あのアルティメットロリと来たら。ああ、早く”ブラックフォルテシモ”が頑張って滅ぼして欲しいものですわね」
 一応一般人に正体は秘密なため自分で名乗りはしないが、物凄いわざとらしさでフォルテシモをイチオシする。
「ち、違うんだよ! あそこにいても、きっと心の優しい、普通の感性の人だっていると思う!!」
 必死に声を荒げるなるの肩に、優しく手を添えるひびき。
「なるさん、あなたのその、悪の中にも善の心を信じようとする博愛は素晴らしい事ですわ。けれど、あなたもニュースや新聞は見ているでしょう? あの集団は、正真正銘の変態の集まりですわ。あんな集団にまともな人などいるはずはありません。慈悲など不要ですわ」
「うう……」
 今度はなるが返す言葉もなくうなだれる。
 何故かますます元気がなくなったなるを励まそうと、ましろが明るく声をかける。
「そ、そういえばなるちゃんこそ、今日も国府田君と一緒にお弁当食べてたよね! いいな〜、なるちゃん、らぶらぶだね〜」
「ち、違うよ! 私とらいちゃんは、そんなんじゃ……!!」
「えへへ〜、ばればれだよっ」
 指をもじもじとつつき合わせてしどろもどろになるなるに、ひびきも優しく微笑む。
「そうですわね、今さら隠しても仕方がないですわ」
「珍しいねー、ひびきちゃん、風紀には厳しいのに」
「あら、心外ですわね。私はこれでも、男女の愛にはあなたより理解があるつもりですわ。それに赤坂さんと国府田君は今時珍しい節度を守った爽やかなカップルですもの。見ていて気分がいいですわ」
「それは……」
 カップルらしいどろどろした事が何もできないからなのだが。

「ところでお二人とも、昨日の『火炎ライターモケケ』は見まして? 齢60の校長が生徒を守るために凛として変身するのは燃えましたわね〜! 中盤最高の盛り上がりでしたわ〜!!」
「う、うん……」
「そだね……」
 興奮冷めやらぬ様子のひびき。
 適当に相槌を打っておく。毎週半ば無理矢理ひびきに見せられている特撮だ。
 ひびきは重度の特撮マニアだった。戦闘時のこれ見よがしな行動もほとんど特撮から影響を受けたものだ。
 そして、主人公や準主人公のようなイケメンよりも、ほんの時々活躍するような脇役、それもベテランの年配をこよなく愛していた。ひびきは年寄趣味なのだ。アルティメットロリを憎む理由がここにもある。
 黒崎コンツェルンがスポンサーになったお陰で、今の日本のヒーロー特撮は予算が潤沢になり、毎週のTVシリーズですら劇場版を凌駕するクオリティで製作されている。
「校舎の屋上から飛び降りて変身しながらも、真下にある花壇を庇って、着地前に校舎の壁を蹴って200mほど空中滑空するシーンでは、不覚にもわたくし、達しそうになってしまいましたわっ! ああ、両手を腰に当てたまま片足で空中滑空する渋めのおじいさま……思い出したらまた……」
 頬を押さえて身体をくねらせるひびき。これで、授業中うっかり携帯を鳴らしたりした子は教師に代わって廊下に立たせるような鬼風紀委員とはとても思えない。
「私ビデオで見たんだけど、あの変身シーン、スローで再生したら、若い人が飛び降りてたよ」
「あ、私もビデオで見たけど(情操教育とか言われて)、あのおじいちゃんがバイクに乗ってるとこ、身長が全然違ったよ」
「あなた方の目が腐っているのですわっ! 中の人などいないのですわっ!!」
 そう言いながらも、VFXスタッフの怠慢をあとでこっぴどく叱ろうと決意するひびき。
 隣になるがいるので言葉には配慮している。
 これで二人だけの時には、その週の戦いを取り上げ、ましろに戦闘時に決め台詞やポーズを強要したりするのだ。
 ホワイトピアニシモの決め台詞はそのほとんどが、ひびきに指南されたものだった。


「それでは、ましろさん。私はこれで」
 校門の前を占拠する、冥界の石の如く黒光りした長大なリムジン。
 地球を守るマジカルメイドの一人、黒崎ひびきは、下校中の生徒達の奇異の目など意にも介さず、そのコーナリング不可能な長さのリムジンに乗り込んだ。
「ば、ばいば〜い……」
 そして主戦力というか、ほぼ一人で地球を死守しているマジカルメイド、ましろは、引きつった笑顔でそれを見送った。
 発進し始めてから10秒経っても、まだ側面が見え続けるリムジンとはいかがなものか。

「黒崎さんってすごい人だよね……」
 ようやくリムジンの最後尾が目の前を通り過ぎ、ほう、と感嘆の声を漏らすなる。
「ひびきちゃんがすごいのか、リムジンがすごいのかな……」
 苦笑いをしていると、じっとなるが自分の事を見つめていた。
「ど、どうしたのなるちゃん?」
「いいなあ、ましろちゃんは、幼くて」
「は!?」
「幼くて……可愛いなあ」
 一瞬アルティメットロリが普段自分に向けるような視線を想像し身構えてしまうが、どうも純粋に羨んでいるように感じられた。
「え、あ……?」
「胸はぺったんこだし、顔は色気っていう言葉とは地球と月くらい遠いし、声も幼稚園児みたいだし」
「……ほ、褒めてるんだよね、それ……」
「羨ましいのよ!! 私は! こんな育っちゃって……育たなくていいのに! 胸なんていらないのに!!」
「なんて贅沢な……」
 巨乳になれるなら悪魔に魂を売る覚悟すらしているましろにとって、それは挑戦状に等しかった。
「そうよ、私は……」
 溜め息をつきながらも、しきりに地面を見回すなる。
 哀愁気分に酔いたいのか、蹴るための空き缶を探すが、手近なものが無いため、通り道脇に置いてあったドラム缶をトーキックで蹴っ転がす。
「えい」
「あわ!!」
 そのままドラム缶は通学路の坂を転がっていき、きゃーという悲鳴や、キキーガキャキャグワシャ!! というまるで急ブレーキを踏んだ車が電柱に激突してその車に乗っていた明日タイトル戦を控え勝利を恋人の誕生日プレゼントに捧げようとしていたボクサーが取り返しのつかない怪我をしてしまったような音が響く。
「……ねえ、ましろちゃん。自分の好きな人がロリコンだったら、どうする?」
「大分バイオレンスな事された後にそんなさらに+10段階バイオレンスな事突然聞かれても……」
「私、好きだよ。らいちゃんの事、大好き。……でもね」
 そよ風がなるの髪を哀しく揺らす。
「らいちゃんね……ロリコンなの」
 電柱に頭から突っ込むましろ。天下の往来で堂々と語っていいことではない。
「ううん、ロリコンになりつつあるの。望んでいるわけじゃないのに、ロリコンになろうって努力してるから、私、止められなくて……」
「いや、止めようよ」
 苦悩する美少女位置に酔うなるに、ましろの突っ込みは届かない。
「だから、私じゃらいちゃんの望む女になれないのかなって、すごく不安で……!!」
「ロ、ロリコン云々はともかく、分かるよ」
 互いの想い人に対する悩みは真逆なだけで、同じ。二人は心の距離が縮まるのを感じた。
「私達、反対の身体で生まれてきたらよかったのにね……」
 しかし、ひびきの言う通り、男の子がスタイルのいい女の子に憧れるのは当然。
 そういう意味では、なるの方が厳しい立場に置かれているのかもしれない。
 限りなく0に近いとはいえ、自分にはまだないすばでぃーになれる可能性は残されている。
 だが、なるが幼児体型になることは、正真正銘、可能性は無い。
 今にも泣き出しそうななるの手を取り、ましろは明るく言った。
「ね、なるちゃん! 街にいかない」
「え、どうしたの急に……」
「いいからいいから! 気分転換!」
「街………………あ、だ、駄目よ、今日は! ましろちゃんなら絶対狙われる!!」
「え、何が?」
 要領を得ない否定を続けるなるを強引に引っ張り、ましろは街へと繰り出した。
「えっとねー、おいしいケーキ屋さん教えてもらったんだー。今、キャンペーン中で半額なんだって!」
「わ、ホント?」
 思わず笑顔になるなる。
『そうだよね、ましろちゃんの好意は無にできないし、もし街にあいつらがいても、いくら何でもそう都合よくケーキ屋さんに来るわけ無いか』
 それに、いざとなったら、自分が守ればいい。なるは、頷いて手を握り返した。
「えへへっ」
「ふふふっ」
 二人が手を繋ぎ、微笑み合いながら街を駆けて行くと――――――
「うわーははははは、者ども、ケーキをエサに幼女を攫えーーーーーーい」
「ロリーーーーーーー(かけ声)」
 ズザザザザザザザザザーーーーーーーーー、とアスファルトを抉りながらヘッドスライディングする二人。
「アルティメットロリーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
 そこには、幼児達の長蛇の列、そして、ウサ耳ネコ耳を持ち不敵に笑うキワメテロリの姿があった。
 横ではノートパソコンらしきものを手にソコナシロリもいる。運悪く、ソコナシロリがなるに気付いてしまった。
「なる隊員……?」
「ひっ!!」
 なるがパントマイムで『言わないで!』と表現するが、それには目もくれず、横にいるましろを目ざとく捉えた。
「ほう……これは、露骨にハイポテンシャルな幼女……組織への献上物ですか。あまり勤労とはいえないと思っていましたが、やりますね。なる隊員」
「なる、たい……いん……? まさか、知り合いじゃ……ないよね…………」
 怪訝な表情でなるを見るましろ。
「うわーーーー! 知らない知らない!! 私、あんな変態さん達知らないーーーーーーーーーーーーーー!!!」
 下位戦士ならそれだけで絶命するような強烈な殺気を込めた視線でソコナシロリを睨みつけるなる。
 さらに最悪なことに、幼女にケモノ耳をつけるのに勤しんでいたキワメテロリまで、ましろに気付いてしまった。
「むう!? な、なんと……素晴らしい! これほどの幼女、ピアニシモ以外では会った事はない!!」
「うわああああまたこういう人がーーーーーーーー!!!」
「うむ! 肌の色艶、身長、声、胸の平坦さ、全て申し分無し!! 漢心を揺さぶる幼女よ!! 共に湯船に浸かり、100まで数えたくなるわ!!」
 目を閉じ、じっと瞑想に浸るキワメテロリ。頭の中で自分がされている事を考え、全身が総毛立つましろ。
「いやーーーーーーーーやめてーーーーーーーーーーーーーーー想像の中でも私にそんな事しないでーーーーーーーーーーー!!!!」
「ふははははは、これ、暴れるでない、目にシャンプーが入るぞ、幼な子よ」
「きやああああああああああああああ脳内シミュレーション進行中ーーーーーーーーーーーー!!!」
 怯えるましろを守るように、なるが十二神の前に立ちはだかる。
「ましろちゃん、逃げて!!」
「そ、そんな、なるちゃんは!?」
「大丈夫よ、こいつらロリコンだもん、私に興味なんて持たないわ!(毎日実体験で証明済みよ!!) ましろちゃんが逃げ切ったら私も逃げるから、早く!!」
 しかし置いて逃げる事に抵抗があるのかその場を離れようとしないましろ。鞄に括り付けられたシュイームが小声で叫ぶ。
『ましろちゃん、ここは彼女の言う通りに! 人目のつかないトコに逃げ込んで、変身だ!!』
「わ、わかった……助けを呼んでくるからね、なるちゃん!!」
 駆け出すましろを二人が追おうとするが、なるが必死に両手を広げてそれを遮った。
「なる隊員!」
「ましろちゃんは私のクラスメートなの! やめて!」
「なにい!? おのれ、貴様、あれほどの幼女と同じ学び舎に通っていながら、我々に何故教えなかった! これは重大な裏切り行為ぞ!!」
「教えたらあんたら、学校に来てましろちゃんさらうつもりでしょ」
「フッ、さすがはなる隊員。理解が早い」
「当然よ。スクール水着姿で世界史を学んでもらうわ!!」
「否定しろヘンタイどもーーーーーーーーーー!!!」

 ビルの角を曲がり、辺りに人がいない事を確認する。
「もうここまで来れば大丈夫だよ! 急ごうましろちゃん、いくら相手がヘンタイでも、なるちゃんが心配だ!!」
「いつもいつも、許せない……許せない許せない、全員お掃除してやるーーーーーーーーーーーーーー!!!」
 カチューシャを変身ステッキに変えると、眩い光を放ちながら変身するましろ。
「ぷにぷに〜めたもるふぉーぜ!!」
 光が止み、姿を現したのは、ツインテールになりロリ度に磨きがかかったましろ…… メイド服に身を包み戦う白き正義の戦士、マジカルメイド・ホワイトピアニシモだった。


後半(第4話)へ続く――――――







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