前回までのあらすじ
謎の黒づくめの女達にちっちゃくなる薬を飲まされ幼女になった高校生探偵・神田川ドイルは、組織を追いつめるためあえて小学生のふりをし、探偵事務所に居候していた。
だが、真に恐ろしいのはその組織ではなかった。
「その薬量産すれば、世界中幼女だらけにできるじゃん!!」
神をも恐れぬ野望を持った球体の魔の手が、組織に迫ろうとしていた……。
| マジカルメイド ホワイトピアニシモ なちゅらる |
| 第4話 え〜っ、どうしよー、第三のマジカルメイド!? |
「おのれ、そこをどけ、なる! 早くあの幼女を追わなくては!!」
百戦錬磨の風貌の巨漢が幼女を求めてたぎる姿は、精神衛生上激烈によろしくない。
それでもなるは、友情に報いるためその場を動こうとしなかった。
「フ、キワメテロリ。彼女も女子高生としての仮の姿を持つ以上、級友を立てなくてはいけない時もあるのでしょう。そう目を血走らせず」
「あのヘンタイ集団にいる方が仮の姿よ!!」
「……なるよ。お前は女な上、日に日に身体が丸みを帯び育っていく、言わば我らの敵として育ちつつある存在。だが、身体はどうあれお前にもロリ萌えという崇高な精神があったからこそ、首領様もお前をここまで見守ってきたのであろう。
今のお前の行動、自ら処刑を望むようなものぞ」
なるの頬を冷や汗が伝う。
今、なるは選択を迫られていた。死ぬ気で戦えば十二神二人相手といえども倒せるだろうが、それこそ完璧に組織との決別を意味する。自分はよくとも、雷は、築いてきたもの全てを失う事になる。
それだけは耐えられなかった。
覚悟を決める時が来た。この場を切り抜けられる嘘は、一つしか思い浮かばなかった。
「フン、十二神ともあろうものが、随分と見る目がないのね。言わないと分からないのかしら」
「何だと?」
「組織への裏切り? バカ言わないで、私は今、組織の理念に、自分の信念に従って行動しているだけよ」
別人のように熱い瞳。十二神である彼らすら、なるの威圧感に後ずさりそうになった。
「ぬう!」
「ま、まさかあなたは!!」
「そうよ! 私はあのクラスメイトの子を愛しているのよ!! だからあんたらなんかに渡せないってーーーのよ!! 退かなきゃあんたら相手でも戦うわよ!!」
グワワワワッシャー、と劇画調に戦慄する二人。
未知の世界、彼らにとっては神の領域ともいえる高みに辿り着いた女の姿がそこにあった。
「な、なにいい〜……百合! 百合かッッッ、百合なのか!! むうう〜」
「ロリ、百合……ろりゆり……なる隊員、あ、あなたはいつの間にそんな桃源郷へッッッ」
二人は全く疑おうとしなかった。それもそのはず、なるの瞳には偽りなき愛が溢れていたからだ。
もっともそれはましろにではなく、雷に向けられたものなのだが。
「フン、残念だったわね、私とあの子はもうお風呂で一緒に洗いっこするような仲なの。あんたの入る余地なんてないのよ。諦めなさい」
キワメテロリの先ほどの瞑想に対する牽制だ。
「馬鹿なっっっ、何故俺を呼ばぬ! 幼女と洗いっこできるとあらば、このキワメテロリ、神々を相手にしようと戦う用意があるぞ!!」
「呼ぶかアホオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!」
「……わかりました。あの幼女は諦めましょう。しかし、あなたがすでにそこまでの高みに達しているのなら、そろそろ組織のために表立って働いてくれなければ困る。あなたなら多くの若きロリコンを導けるでしょう。さあ、一緒にこの街の幼女を捕獲しましょう」
「えええぇぇ!?」
予想外の返しに対応できず挙動不審になるなる。
ソコナシロリはポン、と手を打つと、ごそごそと何かを取り出し始めた。
「なる隊員、あなたは普通の人間としての生活が崩れる事を恐れているのでしょう。さあ、この変身スーツを着て正体を隠しなさい。せめてもの慈悲です」
なるにやたらヒラヒラのついたスーツを手渡すソコナシロリ。ちゃんとフルフェイスの仮面もついている。しかし。
「こ、これ、サイズ小さすぎない……?」
共に幼女を捕獲せよ、という変態指令に反抗するのも忘れ、そんな些細な事を気にしてしまう。
「もちろん、標準的な幼女サイズです。我らの、幼女服以外の服は作らない作らせない持ち込ませないという三原則に従って」
「着れるかっっっ!! 捨てろそんな理念ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
自分達は標準サイズの服を着ている。女にしか適用されない御都合な理念にムカついていると、幼い声が空に響き渡った。
「そこまでよ、ヘンタイさん達!!」
目のくらむような後光を背負いながら、ホワイトピアニシモが現れた。
「げっ!!」
なるが露骨に嫌そうな顔をする。話がややこしくなりそうだ。
「な、なにい!? 現れたか!!」
「こ、これがホワイトピアニシモ……う、うう……」
「さあっ! 悪者どもー! マジカルメイドの名にかけて、この地球を汚す悪者達はお掃除しちゃうぞー!!」
ビシっとポーズを決める。瞬間、二人の身体が宙に浮いた。
「む……おおおおおおおおおお!?」
「ぐくっ!!」
圧倒的な幼気に気圧され、キワメテロリとソコナシロリが同時に吹き飛んだ。
きりもみしながらビルの壁に激突し、吐血する。
「ぐうう、こ、これがピアニシモ……何たる幼さ、何たる愛らしさ……全身の血が沸騰するようだわ!!」
「四天王全てが倒されたのも頷ける……手強い、手強いですよ!!」
「お嬢さん、早く逃げてください!! ここは危険です!!」
なるに向かい正義の味方お約束の台詞を投げかける。ぎこちないのはひびき直伝だからだ。
「え、あー……」
「フ、なる隊員、仕方ありません、ここで下手に言い訳をしてはあなたの仮の生活が危ういでしょう。素直に逃げるふりをしなさい」
危険なのはこのメイド服を着た幼な子なのだが、なるは素直に言葉に甘え、走り出した。
ピアニシモは常勝無敗。このヘンタイどもが倒されてくれるなら、それに越した事は無い。
……もう少し早く来てくれれば、レズだとカミングアウトしなくて済んだのだが。
「者ども、かかれい!」
「「「プニーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー(発狂)」」」」
戦闘員は襲いかかる前に、ある者はついんてーるの愛らしさに、ある者は声の幼さに、ある者はうなじを見て何故か、次々と満足げに蒸発していった。
「何、強化改造を施したハイパー戦闘員が……」
「無理も無いわ。奴らは五感も強化された。その鋭敏になった全ての感覚であの幼さを受け止めては、自滅してしまう!!」
「ク、諸刃の剣だったという事ですか……!!」
十二神と対峙するピアニシモ。二人は、自らも発狂しそうになるのに耐えた。膝が震え、涙すら零れそうになる。
「フッ……わ、私とした事が……聞こえそうな鼓動が恥ずかしい……」
「どうした? お主らしくないぞ……?」
「好きとか嫌いとか、最初に言い出したのは、誰なのでしょうね……」
「駆け抜けていくわ、俺のメモリアルが」
だが彼らはロリ十二神。
己の誇りにかけ、やすやすと幼さに屈する事は許されない。
「……心を! 心を強く持てば、この甘美な誘惑にも打ち勝てるはず!!」
胸の前で両腕を交差させ、気を解放するキワメテロリ。目を閉じ、精神を集中させ始めた。
「ふはははは、走るでない、まだ身体を拭き終わっておらん、風邪を引くぞ、ふはは、これ」
「きやああああーーーーーーーーーーーーーまた妄想始めたこのヘンタイ!!」
「フッ、君の瞑想はいささかエレガントさにかける」
その横でソコナシロリも精神統一し始める。
「大丈夫です、怖がる事はありません。女性の胸は小さければ小さいほど美しい。さあ、その手をどけて、私によく見せてください」
目を閉じ、優雅に恐ろしい妄想をするソコナシロリ。彼もまた気がどんどん増大していく。
何を妄想しているかが手に取るように分かり、悶え転げるピアニシモ。
「最悪ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
ダブルで妄想され、精神崩壊寸前のましろ。気にしなければそれまでの話だが、気にするなという方が無理がある。
「ましろちゃん! 戦うんだ!!」
気持ちはいたくわかるがとりあえず立場上戦いを促すシュイーム。
「いやーーーーーーーー無理ーーーーーーーーもう世界なんて滅べーーーーーーーーーー!!!」
ピアニシモが使命を放棄し自暴自棄になりかけたその時、救世主が現れた。
「おーーーーーーーーーーーーーーーーーっほっほっほっほっほ!!」
「何奴!!」
「く、下品な罵声でメディテーションが破られた……あと少しのところで!!」
あと少しでどうなっていたかは想像したくないが、二人の妄想攻撃は天高く木霊した笑い声に破られた。
「ああっ……この、21世紀の今探すのは徳川埋蔵金を探すより難しそうな、安土桃山じみた笑い声はっ!!」
スピーカーから響く騒音じみた大声。っていうか笑い声。
爆音と共にリムジンが市街地へ突っ込んでくる。あの長さで神のコーナリングを決め、奇跡的に一人の死者も出さずにしかし、ゆうに時速90kmは出すリムジン。運転手というより、もはやパイロットと呼ぶべき辣腕使用人が運転しているに違いない。
サンルーフが開くと、ソファーがバネのように撃ち出され、ひびきが天高く舞い上がった。
あの逆光の当たり具合、完璧だ。計算され尽くしたシチュエーションと共に、ひびきが10階建てのビルの屋上へと飛び、着地した。
「情けないですわよ、ホワイトピアニシモ! どれだけ悪が現れようと、私達が戦い続ければいいのですわっ! この世から、悪が消え去るその日まで!!」
「ひびきちゃん……やっぱり助けに来てくれたんだねっ!!」
「いつもの事ながら情けない! 誰もあなたなど助けたりはしませんわ……。私は、この星の美を損ねる変態どもを野放しにしておきたくないだけですわ!! 黒崎コンツェルンの一人娘として!!」
お決まりの台詞と共に高々と掲げられた右手の掌に光が収束し、ましろと同じマジカルステッキが力強く握られる。
「むちむち〜めたもるふぉ〜ぜっ!!!」
変身ワードを叫び、躊躇うことなく屋上から飛び降りるひびき。
ましろは何故屋上に昇ったのか激しく問いたかったが、本人は恐ろしく真顔だ。
10階建てのビルの上から飛び立ったとはいえ、2、3秒もすれば地面に激突するはずだが、光を放ちながら、明らかに15秒は滞空している。
地球の重力までお約束を守るためその摂理を塗り替える。恐るべきはお約束の強制力。
もちろんアルティメットロリの面々も、そんな無防備の滞空状態を狙うような真似はせず、腕組みをしたり、腰に手を当て優雅にポーズを決めたまま、じっと変身が終わるのを待っている。
やがて、身を包む光を弾き飛ばし、グラビアアイドルのようにむちむちしたメイドが現れる。
しかし着地点に市の植花がある事を察知すると、彼女はビルの壁を蹴って200mほど空中滑空した。
ビルの壁が僅かに崩れ、中からまるで会社の金を横領していた男が押し潰されたような叫び声が聞こえたが、気にせず、見事、大地へと降臨した聖女。
黒髪が天の川のように輝き、全身からも宝石のような光が放たれている。
まるで女王様――――黒きメイドは、ハイヒールを鳴らしてびしりと決めポーズを取る。
「黒きマジカルメイド……ブラックフォルテシモ!! 平和を乱す変態ども!! 塵一つ残さずお掃除して差し上げますわ!!」
アルティメットロリの面々も、マントで風を切りながら手を振り、ポーズを決める。
「現れおったな、ブラックフォルテシモ……頼んでもおらぬのにむちむちしおって、失明するわ!!」
「女性に悪口を言うのははばかられますが……あなたにマジカルメイドの名も姿も重すぎる。あなたなど幼女ではない、妖女と呼ぶに相応しい。フッ」
やはり一瞬で変身したかのように気を遣って、憎々しげに呟く。悪役の鑑だ。
「まずは貴様!! 不倶戴天の怨敵! ブラックフォルテシモよ! 我らが洋々たる未来のため、この剣の錆となれい!!」
自分と同じ……いやむしろそれ以上の長大な刃渡りの刀を、目にも止まらぬ速さで振り回すキワメテロリ。
「は、速い!!」
「幼女への一念が我が剣閃を無限に変える! さあ、終わりだ!! 死ねい!!」
間一髪、避わしきれなかった最後の一閃をステッキで受け止めるフォルテシモだが、剣圧でメイド服の胸元が切り裂かれ、胸が露わになった。
「きゃっ!! ……な、なんて事を!!」
慌てて胸元を隠す。マジカルメイド服には自己修復機能があるが、その間ずっと胸を晒しておくわけにもいかない。
下卑た視線を想像し顔を紅くする。しかし、その光景をモロに網膜に焼き付けたキワメテロリの反応は。
「ぐ……あああああああ!! 目が、目があああああああああああ!!!」
まるで滅びの呪文の洗礼を一身に受けたモールス信号の得意な野心家のように、目を押さえ悶える。
「キワメテロリ!! くっ、無理も無い……あのような薄汚いものを見せられては! おのれ、卑怯ですよ、ブラックフォルテシモ! 真っ向から戦いを挑むものに、このような外道な手を使うとは!!」
「人の胸を見ておいてその反応、あなた達それでも生命体ですのーーーーーーーーーーーーー!! 私の胸は、色も形もツヤも手触りも全て完璧ですわ!! この侮辱……許しませんわ世おおおおおおおおおおおおお!!!!」
「それはこちらの台詞よ……自惚れおってこの原始生物めが! おとなしく単細胞生物と共に惑星電離層で暮らせい!!」
「スーパーチェンジ!!」
「我が身体を覆え、幼女への熱き波動!!」
胸の修復を待たずスーパーチェンジするひびき。裂け目は直ったが、スカートが短くなるなど露出が強化された。
そしてキワメテロリも、その幼女萌えを莫大な闘気へと変える。街中を覆い尽くすようなすさまじい気だった。
互いの信念を賭け、二人の戦士が激突する。
ソコナシロリの注意がフォルテシモとキワメテロリの戦いに向いた一瞬、ここぞとばかりにピアニシモが飛び出した。
「えやああああーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「ふはっ!!」
左手を後頭部に、右手を胸の前に添え、右足を90度にピンと曲げ跳躍するソコナシロリ。
ピアニシモの乱れ箒をことごとく避わし、無駄に回転数を上げながら弧を描きピアニシモの背後に着地した。
「しまっ……」
腕と肩を掴まれ、華奢な身体に似合わない力でガッチリと拘束される。
首筋に顔を近づけられ、思わず大声を上げそうになった瞬間。
「ふぅーむ、素晴らしい香りです。これほどの高貴な香りは、未だかつて出会ったことが無い」
「は、か、香り!?」
「私は10年の過酷な修行の末、幼女のティスティングにおいては全宇宙最強を自負するまでになりました。その私の確かな嗅覚が訴える。あなたの香りは、女神のそれだと」
「そんな無駄な時間と努力を費やすくらいなら一流のソムリエさんになれたでしょぉ……」
無駄だとはわかりつつも良心に訴え説得を試みる。
「馬鹿な! あのような無機物の嗅ぎわけ、犬にでもできます!」
「謝れ! 全国のソムリエさん相手に今すぐ謝りの全国行脚しろーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「真に尊きは生命の芳香! 真にかぐわしきは幼女の芳香!! 幼女が若さ幼さと共に大気に解き放つ幼女フレグランスこそ、惑星の命の源なのです!!」
芳香を追い求めて完全に彷徨してしまった感のある変態だが、その信念は曲げようもなく一本筋だった。
「そ、それにしても素晴らしい……ああ、何時間でもこうして鼻をすんすんと鳴らしていたくなる。あなたのお風呂上りの香りもさぞ素晴らしいのでしょう……石鹸と幼女本来の香りが絶妙のハーモニーを奏でる、お風呂上り12分40秒後の幼女の香り! それこそがこの世で至高の香りなのです! さあ!!」
「さあって何!!」
右目が「入」、左目が「浴」になっているソコナシロリ。
「きいいいやあああああああああ助けてーーーーーーーーーーフォルテシモーーーーーーーーーーーー」
なるが宇宙船への空間転移装置を発動させようとすると、それより先にこちら側へのワームホールが開いた。
「え!?」
「あれ、なるちゃん?」
中から雷が姿を現す。
「らいちゃん、どうして!?」
「学校から一旦帰ったら、なるちゃんがいる街に十二神のみんなが出かけたって……心配で来ちゃったんだ」
「らいちゃん……」
きゅんと胸が熱くなる。それも一瞬の事だった。
「よし、僕、二人を助けに行くよ。危ないからなるちゃんは帰ってて」
「え、うわ! ちょっと、仮面くらいつけてよ!!」
思わず条件反射で出る姉行動。弟のほつれかけた制服のボタンを直すように雷に仮面をつけてあげるなる。
雷が礼を言って走っていった後、過ちに気付いた。
「わーーーー! しまった、行かせちゃ駄目じゃん!!」
ピアニシモは常勝無敗。……つまり……雷を人間と気付けなければ、今までのように木っ端微塵にされてしまう。
「と、止めないと……!!」
「まったく、ましろさんは毎度毎度何をやってるんですの……!」
「おのれ、余所見をする余裕があるか!!」
「……ありますわよ?」
「むうううお!!!」
スーパーチェンジしスピードが大幅に増したフォルテシモに攻撃が当たらず、怒りを露わにするキワメテロリ。
「ち、むちむちしておるくせにすばしっこい女よ! いい加減で苛立ってきたわ!!」
「ピアニシモ!」
フォルテシモがメイドエネルギー波を放ち、ソコナシロリの足元に着弾する。
その隙にソコナシロリの顔面に箒を叩きつけ、なんとか脱出に成功するピアニシモ。
「ありがと、ひび……フォルテシモ……」
「あなたもスーパーチェンジなさい。一気に片付けますわよ!!」
「うん!!」
十二神の二人もまた、並び、体勢を整える。
「キワメテロリ、ここは二人、力を合わせ、まずはあの邪魔者を片付けましょう。そして」
「ふん、貴様はいけ好かぬが、仕方があるまい。十二神に伝わるあの奥義で!!」
「いきますよ!」
二人が向かい合い、手をかざすと、二人の中心に球状の気が練られていく。
「受けよ、フォルテシモ! 究極必殺!! 槌因鄭流羽崇華!!」
球が頭……左右の二人がそれぞれのてーる。二人は、ついんてーるの陣形を作り上げた。
その構えから打ち出される無数の球弾……避わしても避わしても、凄まじい軌道を描いてフォルテシモに直撃する。
「きゃああああああ!」
「避わすことなどできぬ!! ついんてーるの神秘、貴様のようなむちむちした女には破れぬわ!!」
バリアー越しにでも凄まじいダメージ。このままではあと数発で破壊される。
●槌因鄭流羽崇華(ツインテールバズーカ)……
ついんてーるに関する伝説・逸話は既に星の数ほど発見され、今なお増え続け枚挙に遑がないが、先ごろ発見されたのが、ついんてーると幸運に関する因果関係である。
古代より預言者・巫女など、神の托を受ける幼女は決まってついんてーるだった事は数々の文献から明らかだが、この事象を、魔力、神聖さだけではなく、幸運を呼び込むという観点からとある著名教授が調査した。
十五年にも及ぶ実験の結果、ついんてーるの少女は他の少女に比べ幸運であるという確実な結論が導き出されたという。最初は奇言に寛容なついんてーる学会ですらも半信半疑だったこの説も、教授が自慢の愛娘のついんてーるを以てして公然と証明して見せた。
彼女はマークシートテスト500問全てを、勘で書き、正答率99%を弾き出したのだ。
他の髪型の少女の平均30%に比べ、これは偶然では済まされない驚異的な結果である。
そして。ついんてーるには、幸運をもたらす力が潜在している……その事実が、長く謎とされていた古代中国最高峰の奥義・槌因鄭流羽崇華の要諦も解明した。二名の戦士がツインテールを形作るように気を練り上げる事で神がかった命中率を実現するこの技は、ついんてーるの幸運をもたらす特性に裏打ちされたものだったのだ。
教授は我々がよく使う言葉を挙げ、その驚愕の真意を明らかにした。
思わぬ幸運に偶然遭遇した際「ついてる」と言い表すのは、「ついんてーる」から派生した言葉……だと。
このようなよく考えればすぐにも分かりそうな事が21世紀の今になって明らかになったのは、人類の文明への驕りに対する警告のように思えて仕方ならない、と……。
夢水書房刊 「幸運を呼ぶ二つの房 〜万の御託より一のついんてーる〜」より抜粋
「うぐ、よ、避けきれない……こんな事って……」
「さらばだ! フォルテシモ!! とどめだ!!」
最後に巨大な弾をチャージする二人。目を瞑るフォルテシモ。
「えーーーーい!!」
「むお!?」
「う!!」
ジャンプして攻撃を仕掛けるピアニシモ。スカートが翻り、未成熟な太股とその名に相応しいピュアホワイトの下着が覗く。
影を縫われたように硬直してしまうキワメテロリとソコナシロリに、箒が直撃した。
「がはあ!!」
「うぐあ!!」
「ひびきちゃん! 大丈夫!? すーぱーちぇーんじ!!」
ピアニシモもスーパーチェンジする。
地球にある全ての美を否定するかのような気高き幼さ、そしてついんてーる。
「むおああああああああああああああ!!!」
「ふぐああああああああああああああ!!!」
十二神は生命そのものを心の支えにするように、その圧倒的な幼さに耐えた。
「こ、こ、うぐ、こ、こうなれば仕方ない! ピアニシモにもこの奥義を!!」
「殺しはしません!! ただ、こてんと横に可愛く寝そべってもらうだけです!!」
同じように奥義の構えを取る二人だが、何故か、ピアニシモに見られただけで、気は霧散し、二人はそれぞれ反対方向に弾かれた。
「「何い!!」」
「……あれ?」
「く、ま、まさか、これは、神の意思か!!」
「真のついんてーるを前に、形だけとはいえ、男の我々がついんてーるを作った事に! 地球が……いや、宇宙の摂理が怒っているというのですか!!」
「? ま、まあいっか……」
箒に全エネルギーを集中するピアニシモ。
これが真のついんてーるだ、愚か者たちよといわんばかりに、この星で最なる美を誇るついんてーるが空に踊る。
「惑星破壊!! メイドクラーーーーーーッシュ!! ギャーーーーラーーーークーーーーーーシーーーーーアーーーーーーー!!!」
「「うあああああああああああああああああ!!!!」」
ピアニシモの最強必殺技で天高く舞い、電離層を突きぬけ宇宙まで昇っていく二人。
「ソ、ソコナシロリよ……最期だから言おう……貴様のその知略、フ、同じロリコンとして、憧れていたわ……。これからは俺のような古くさいロリコンではなく、お前のような男こそ、皆を率いていかなければならんのに、な……」
「それを言うなら私こそ、あなたの全てをねじふせるような腕力、真っ直ぐなロリコンさに憧れていた……力が無いからこそ小賢しいロリ萌えに走らざるを得なかった私だ……あなたこそ、未来ある若きロリコン達を率いてあげなくてはならないのですよ……」
間もなく二人の身体は燃え尽き、チリとなって宇宙を漂う。
だが、二人は満足そうだった。
「強かったな、ピアニシモは」
「そして美しかった……。ロリコンとして、彼女に倒されたのなら、悔いはない」
「これからは星になって、ピアニシモに萌えるか……なあ、ソコナシロリ……」
「はい、キワメテロリ…………」
最後の最後まで、あくまでロリコンとして。二人は潔く散っていった――――――。
「お掃除完了!!」
ビシっとポーズを決めるましろ。
しかし、言い知れぬ不安に襲われ、ふと空を見上げた。
まるでこれから四六時中ロリコンに見張られるようなこの不安は一体、何なのか。
「あ、あれ? 十二神がいるって聞いてたんだけど……みんなー、どこー?」
今頃になって戦場に到着する雷。遅すぎた救援だった。
「……ピアニシモ。あの人、人間に見えなくて?」
「うん、衣装はあのヘンタイさん達と一緒だけど……なんか、普通の人っぽいね」
「というか、何かものすごく聞いた事のある声に聞こえません?」
「……うん、何か今日、その人の事で相談された気がするんだけど……気のせいだよね」
なるの言葉が脳裏を過ぎる。
『ロリコンになろうって努力してて――――――』
「まさ、まさ、まさ、か…………」
「わあ〜!」
ピアニシモと目が合うと、夢見る少女のような声を出す雷。
「初めて見たよ、実物のピアニシモ〜! 幼いなぁ〜、幼いやー!! ははっ、つるぺただー! 無いなー!!(意味不明)」
「……ひび……フォルテシモ。この人も敵みたいだね」
目を逆三角にして闘気を増大させるピアニシモ。
「そ、そうですわね……とりあえず、動けなくなる程度になら……」
二人が容赦なく雷を敵と認識し、構えると、悲痛な叫びが聞こえてきた。
「待って〜!!」
「なるちゃ……」
思わず口を塞ぐピアニシモ。現れたのはなんと、なるだった。
「駄目! ホワイトピアニシモ……さん! この人は悪い人じゃないの! 殺さないで!!」
「赤坂さ……じゃなかった、お嬢さん。確かに彼は人間のようですけれど、あの変態集団に加担している以上、看過する事はできませんわ」
「違うの! らいちゃんは無理矢理やらされてるだけなの!! アルティメットロリに洗脳されているだけなの! 悪くないの!!」
涙目で訴えるなる。さすがにこれだけ愛ゆえの行動を見せ付けられては、怒り心頭のピアシニモといえど、手は出せない。
「違うよなるちゃん。僕が自分の意思でやってるんだ。幼女を大切にするって、素晴らしい事じゃないか」
なるの気持ちもしらず、のほほんと余計な事を喋る雷。違う意味でなるは泣きそうだった。
しかも組織理念の解釈が斜め上に900%ほどずれている。
「それに……」
ピアニシモをちらちらと見ては、落ち着かない雷。
「それに、何だろう、この、身体の奥から湧き上がってくる情動……僕、僕、ピアニシモを見ていると胸が苦しいよ!!」
「へ」
間の抜けた声を上げるなる。
あ、と雷は頭に光が灯ったような充足感に満ちた笑顔を浮かべた。
「そっか、僕、ようやく分かったよなるちゃん……! これが、この心が、ロリコンの心! ロリ萌えなんだ!! 僕、生まれて初めて幼女にときめいたよ!!」
元服を迎えた少年のような清々しさ。
雷は、今までの子犬チックな顔が嘘のように、戦士の顔になった。
その時、戦場に突如として荘厳な声が響き渡った。
『ライよ』
「これは、この声は……!!」
表情を険しくするシュイーム。
「あ、はい! 首領!」
『見事だ。お前はついにロリの境地に至った。これでお前は名実共にロリ十二神の一人。今日よりエライロリと名乗るがよい』
「はい! ありがとうございます! 首領様!!」
あえて今しがたの欠員については触れず、首領がそれだけ言い終えると、再び空を覆った存在感が消えた。
「ぬ、ぬ、ぬ、ぬあああああああああああああああああああああああーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
天地をつんざくようななるの絶叫が響く。
「目を覚ましてらいちゃん!! そんな気持ち偽りよ! あのね雷ちゃん! 私、私……!!」
一時の迷いに流されそうな想い人。今しかない。
意を決して告白しようとしたなるだが……それは、無常な言葉に阻まれた。
「苦しい、こんな気持ち、初めてだよ。ロリ萌えだけじゃない……もしかしたら……これが、恋なのかな」
――――――白目を剥くなる。直後、その瞳に全身の血全てが収束するように血走り始める。
「えーーーーーーー!? 恋! まずい、まずいよこうだく……じゃなかったそこの人!! だって、なるちゃん……」
気になってなるを見ると、阿修羅と般若と夜叉と不動明王と金剛力士像がごちゃ混ぜになったオーラを背負っていた。
「ひいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
地面が陥没する。
空に暗雲が立ち込め始める。
明日タイトル戦を控えていながら悲劇に見舞われ、それでもなお恋人への想いで奇跡の回復を果たしたボクサーが新人ナースのついうっかり頚動脈に空気注射でさらにやばい事になっていたような不安が街を覆う。
なるの怒りは、今頂点に達した。もう、10年に及ぶ鬱憤もストレスも心労も、全てがその憎しみに混ざり、一気に解放された。
「ピアニシモ……許さない……許さないんだから!! らいちゃんの心を……私のらいちゃんのおおおおお!!!!」
「違うよー! 知らないよー!!」
「ロリの魅力でたぶらかして……幼い顔してなんていやらしい! あんたなんて幼女じゃない! 妖女よ!!」
「わーーーーいっつも傍で聞いてた台詞ーーーーー!?」
なるの身体を炎が取り巻く。
「なるちゃん!?」
戦場なのにさっきから本名ガンガンな雷が驚く。……なるもだが。
「むががが!!」
それに呼応するように、シュイームが突然苦しみ始めた。
「ど、どうしたの!?」
「僕の意思とは関係なく、マジカルステッキが……もごご、ぷは!!」
星を吐き出すシュイーム。それは変身ステッキの形になり、なるの手に吸い込まれるように受け止められた。
「「「ま、まさか……」」」
「ぺたぺた〜めたもるふぉーーーーーぜっっっ!!!」
炎に包まれるなる。
業火の中、生まれたままの姿になったなるは……目の錯覚か、どんどん縮んでいっているように見える。
炎が凝縮され、身体に装着されていく。それは、紅きメイド服……。
「「ええええええええええええええええええ!?」」
その炎全てを取り込み、変身したなるは、まさしく、完璧な幼女へと姿を変えていた。
ピアニシモには及ばないとはいえ、見事な幼な具合。心・技・体全て揃った、完全なるロリっ娘だった。
「嘘、マジカルメイド……!? 私とひび……フォルテシモの他にも!?」
「それだけではありませんわ、まし……ピアニシモ、あの子、とてつもない力ですわ! 全身から放たれる強大な憎悪……まるで、意中の男を寝取られた女のような禍々しい怨念を感じますわ!!」
「そんな事して無いし、私のせいじゃないよーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
紅いメイド服を纏ったなる……マジカルメイド・レッドフェルマータは、目を細めながら近づいてくる。
「……言ってくれるわね幼女……つまり、『私知らなーい、私に惚れる男がいけないんじゃーん、アハハー』ってことね」
声まで幼くなっているが、言っている事は木金曜夜10時、あるいは平日昼1時だった。
「そんなニュアンスじゃないよーーーーーーー!!」
「わあ、なるちゃんも幼女になったーーーー!!」
はしゃぐ雷に、複雑そうな表情を浮かべるなる。
きっと、今雷は、自分に萌えてくれている。しかし、それは偽りの自分。
数分前まで憧れ、今は憎悪の対象である、ロリっ娘――――――。
「死ねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
手から炎の弾を撃ち出すフェルマータ。
凝縮された炎は、着弾した部分を拳銃の弾のように貫通した。
「ひゃーーーーー!!」
「ピアニシモ! 誤解云々言う前に全力で戦わなくては……あなた殺されますわよ! とばっちりで私も危ないですわ!!」
空中に逃げる二人。それを追って飛びながらさらに弾丸を連射するなる。
二人で逃げ惑っているうちに、フェルマータの両掌には、地球の核のような禍々しい炎の球が作り上げられていた。
「惑星粉砕!! ミキシングッッッッハーーーーーーーート!!!」
「わーーーーーーいきなり殺す気で来たーーーーーーーーーー!!!」
「メイドクラッシュギャラクシアーーーーーーーーーーーーー!!」
「バイオレンスアダルティーテンプテーションーーーーーーー!!」
同時に二人の技をぶつけても押し返す事は出来ず、3つの技は空中で壮大な爆発を起こした。周囲の雲が全て吹き飛ぶ。
空中で打ち合っていなければ、街一つ消し飛んでいたかもしれない。
「どどどどどどーしよー! スーパーチェンジしても勝てないよーーーーーーー!!!」
「これはまずいですわよ、ピアニシモ……!!」
今まで変態ばかり相手にしていたのに、ここに来て正統派なライバルの出現。しかもそれが、自分達と同じ戦士という皮肉な運命。
ピンチになりながらも、この特撮チックな展開に、ひびきの心は躍っていた。
「悔しいけれど……まだ納得できないけど、それでも私は……私は、ロリっ娘になった!! これで、らいちゃんの心を取り戻すッッッ!!!」
執念、まさしく執念だった。好きな男のために、順風満帆に育ちつつあった女の肢体を捨て去り、幼女への修羅道を歩む。
極点まで達した覚悟の産物。恋に狂った女はかくも恐ろしい。
「なるちゃんも、可愛いな〜」
およそ10数年幼馴染をかまして生きてきて、初めて言われた言葉に胸が熱くなる。”も”なのだが。
「ホ、ホント? らいちゃん」
「うん、幼な可愛いよ」
「ど、どうしよう、心の準備が……で、でも身体の準備はでき始めている、いけない私……」
照れ隠しにビンタで電柱を倒壊させる。
「あ、あなたその身体で男の人とどうこうするつもりですの……」
「ひびきちゃん、どうしよう……なるちゃん強すぎるよ……」
「大丈夫ですわっ。きっと、もう少しズタボロになれば、私達はさらなる新フォームになれるはずですわ!!」
「現実はひびきちゃんの好きな特撮番組みたく甘くないよ〜!!」
しかもスーパーチェンジでさえ大分露出度が上げられてしまうのに、このままパワーアップを続ければそのうち全裸にされてしまうのではないだろうか。カチューシャとリボンとエプロンだけとか。
「後は……ピアニシモさえ殺せば、らいちゃんの愛は独り占めできる!!」
「うわー矛先が戻ってきたーーーーーーーー!!!」
『見事だ、なるよ』
もうだめだ、とピアニシモが諦めた瞬間、天空から響く首領の声。
『お前には見込みがあると思っていたが、よもや自ら幼女……しかもマジカルメイドになるとはな。今日からお前はアルティメットロリ副首領として、若きロリコン達を導いてくれ』
「ぬはあ!? いらねーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
あそこにいるロリコン達には一生をかけても得られない遥かなる地位を戴きながらも、まるで給食残飯処理委員長という肩書きでも与えられたかのような血の涙を流すなる。
「やったね! なるちゃん!!」
感極まって抱きつく雷。いや、エライロリ。……彼は自分に与えられた名前に一片の嫌悪も持っていない。
「わ、わ、ら、らいちゃん……」
「……い、今のうちに退却しよっか、フォルテシモ」
「退却!? 悪を目の前にして逃げろと仰るんですの!?」
「クラスメイトだし! ロリコンになりきれてないし! 清純派カップルだし、いいじゃない!!」
「……わかりましたわ! 一度悪に敗れて、特訓して強くなるのもまた正義の醍醐味! 次は勝ちますわよ!!」
「そういうんじゃないんだけど……」
強引にひびきを引っ張り逃げ出すようにその場を去るましろ。
本日ロリコンとして華々しく覚醒した男と、その男に好かれるために邪念と怨念と憎悪の果てに幼女になった幼馴染カップル。ましろの言う通り、清純派にも程があって膝が笑う。
「……あのね、らいちゃん、わたし……」
インクジェットプリンターの給紙トレイのように平坦になってしまっ胸を高鳴らせ、再び告白しようとするなる。だが。
「ピアニシモ、幼かったなあ……また会えるといいなあ」
「…………」
……宇宙船に帰還後、怒り狂ったなるのとばっちりで、十二神の一人・ツツミカクサズロリが、超物質・アルティメットマターでできた壁を突き破り、宇宙空間にカッ飛ばされた。
「最後にはハッピーエンド……きっとそうなのよ……」
報われない恋愛シミュレーションゲームのメインヒロインじみたシチュエーションに酔いながら、なるは20年ほど老け込んだような溜め息をついた。
次の日。
「おはよ、ましろちゃん」
「ひ、なるちゃん!?」
「どうしたのましろちゃん、そんなにビクビクしちゃって」
「や、あはは……」
なるは昨日とはうって変わっていつも通りの爽やかな少女だ。
怒りも収まったのかもしれない。
「ねえ、ましろちゃん、人殺した事ある?」
「あるわけないでしょ!!」
「……私ね、そのうち、幼女を殺しちゃうかもしれないけど、友達でいてね」
「無茶苦茶言うなーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
「大丈夫だよ、法には問われないから。(お互いマジカルな住人だし)」
「ね、あの、そういう事考えないで、あ、あはは、国府田君との恋を進展させた方が……」
「ありがとう、ましろちゃんと黒崎さんだけだよ、私の事応援してくれるの。……でもね。私の恋を成就させるには、その幼女が邪魔なの。大丈夫、苦悩なら昨日寝ないでしたから。寝ようとするとね、その幼女が私の目の前でらいちゃんに抱きつくの。眠気を感じなくなってね、殺意と憎悪だけが頭に渦巻いちゃうんだあ」
「ひぃぃいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい!?」
修羅の顔だった。
一見いつも通りだが、その瞳の奥には、全てを覚悟した修羅の道に身を落とした者だけが持つほの暗い炎が静かに灯っていた。
正義の味方お約束の正体バレ=困るという法則どころの話でなく、自分がピアニシモだとバレた瞬間、嫉妬に狂った女に取り殺される。
ましろの悪夢のような日々が、幕を開けたのだった…………。
だが、危険なのはましろだけではなかった。
「ああ、ど、どうしよう……あんな素敵な幼女と一つ屋根の下……俺、俺もう、うっ!!」
「とうとう10年の修行の末に幼女盗撮技能全宇宙最強にまで達した俺の力を見せる時が来たようだな」
「なあ、なる様ってネコ耳似合いそうじゃないか!?」
「似合いそうだ! 嫌だ嫌だといいつつも涙目で最後にはおそるおそるネコ耳をつける幼女!! 俺死ねる!!」
「この悪趣味どもが!! 幼女といったらニーソックスだろうが!!」
「いや! デカリボンだ!! 上手く結べずに、その場でくるくる回ってしまうのだ!! うおおおおおおおおおおお、俺を殺す気か!!」
アルティメットロリでは、下士官に至るまで大幅なパワーアップを遂げていた。幼女の力だ。
まさしくなるは副首領としての責務を人知れず果たしていたのだ。
……幼女となったせいで、10年間大丈夫だった貞操の危機が到来している事を、なるは知らない。
続く……の?
|
|