| マジカルメイド ホワイトピアニシモ なちゅらる |
| 第9話 ドキドキ♪ ましろ、はじめてのデート |
気象衛星「あじさい」のさらに上に堂々と佇む悪趣味な宇宙船。
地球征服(と幼女保護)を悲願とする宇宙怪物集団、「アルティメットロリ」。
その巨大な宇宙船は、およそ地球科学などあと数十年、いや数百年かかろうと追いつけないであろう超文明の産物である。
地球人の衛星技術など比較にならないほどの地上監視能力を備えているが、地球はマジカルメイドの聖なる力に守られているため、彼らとて成層圏から盗撮することは
できない。
いや、例えできたとしても、彼らのプライドが許さないだろう。あくまで正々堂々とロリコンたることこそ、彼らのポリシーなのだ。
……宇宙人だからこそ貫ける信念である。地球は、ロリコンがはびこれるほど優しい星ではないのだ。
宇宙船内の大ホールから異様な雰囲気が発散されている。
これまでは遅々として進まなかった地球制服計画だが、こちら側にもマジカルメイドを擁したおかげで、戦局は好転していた。
いかなるロリコン達が挑もうとまさしく一見必殺だった地球最強の戦士、ホワイトピアニシモ。彼女を上回る力を持つマジカルメイド……それが、赤坂なること、レッドフェルマータだ。ずっと慕い続けてきた幼なじみをロリコンとして覚醒させたピアニシモへの天地引き裂く憎悪が、彼女を最強の戦士へと進化させた。惜しむらくは、
憎悪が先行して幼女になったせいで、マジカルメイドの真骨頂であるついんてーるまでは極めていないことだ。
望まずして副首領になったなる。首領のレリーフの真下の玉座に座らされている。定例会議に集まった面々の視線が、なるに集中していた。
「どうした、部下の士気を上げるのも指揮官の役目ぞ」
「あー……適当にやってよ、あたし委員長キャラじゃないし」
「フッ、当然よ。幼女は委員長キャラであってはならぬ。形に囚われぬ腕白さ天真爛漫さこそ幼女の骨粋ではないか」
「馬鹿な! 何と了見の狭い! 拙くも幼女が健気に大衆を導こうとする姿に心打たれるとは思わんか!?」
「我輩は科学者タイプのインテリジェンスな幼女も大好きだがな!!」
「うぬう、幼女の本懐のわからぬ戯け者どもめ!!」
「……勝手にやってよ……」
皆我が強いため会議はすぐに脱線する。特に、今日は十二神が一人しか列席していない。雷がいないのも、憂鬱の一つだった。
「ところでなるよ、変身してはくれぬのか。今のその不必要に育ったお主では、作戦会議をしようにも覇気が削がれる」
「ふざけんなああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!」
なるのプロポーションは15歳としては平均よりかなり上だ。ひびきなどとはくらべるべくもないにしても、中学生女子としては発育がいい。それは普通の男からすれば喜ばしいことでも、この屈強なロリコン達から見れば、神の胸倉を掴み上げて鼻先に頭突きをかますほど大それた暴挙なのだ。
そんな彼らだからこそひびきのようなグラマー少女には親兄弟を惨殺された以上の憎悪を覚えていた。
しかし、幸か不幸かレッドフェルマータになったことで、迷いの種も消えた。
今までは自分と雷が付き合えば、雷は幼女以外の女に心奪われた裏切り者として処されるのは間違いなかった。
だが今では自分は幼女に変身できる。表向き雷がここにいる有象無象どものように、変身した自分に心惹かれたということにしておけば、大手を振って付き合えるのだ
。夢にまで見た幼なじみからの卒業だ。……なるはそう思っているが、なるの一方通行な思いは結構知られている。なるが畏怖の対象なせいで誰も糾弾できなかったのだ。
……問題はだ。雷が、口実どころか、本当に幼女に変身した自分の方に好意を持っているらしき事。
だが、ここで手抜きをすれば、ホワイトピアニシモに一気に天秤が傾いてしまうのは必至。雷が一番気にかけているのはピアニシモの方なのだ。副首領という立場になったこともまた幸いで、戦闘指揮を上手く行って雷をピアニシモに会わせないようにしている。
幸せと不幸がまさしく平等に訪れた。
全ては、雷がロリコンになることを止められなかった自分の責。
怨敵ピアニシモを抹殺するため、なるは復讐鬼になる決意をしたのだ。
「フフ、そうして雷ちゃんはもう後戻りできなくなった私を優しく抱きしめて、全てを受け入れてくれるの……」
なるは酔っていた。しかして復讐鬼になりきれず女として苦悩するであろうこれからの自分を想像し、限りなく酔っていた。
「もー、進まないなー、とりあえず報告して報告ー。あんたらのどうでもいい戦果」
「フッ、手厳しい。だが副首領、この報告を聞けば、きっと変身し幼女の姿で私を労ってくれるでしょう」
高位戦闘員が立ち上がり、戦果を報告し始めた。首領のレリーフが光り、存在を誇示する。緊迫感が高まった。
『報告せよ』
「は、日本国の国会議員過半数を皮切りに、世界各国の要人のマインドコントロールに成功。ロリコンとして第二の生を歩ませてございます。次回の予算委員会では、幼女税の設立が可決される手筈になっております」
『うむ、よき仕事よ。汗して作った金、国に納めるならばまず幼女に使わずしてどうする』
「まこともって。そのありがたき御神言、堕民全ての脳髄臓腑に刻み込みたく」
苦悩するなる。確かに税金のムダ使いドブ捨ては類を見ない国だが、それでも幼女に投入されては世のお父さん達も浮かばれまい。……浮かばれるのか?
「しかし一つ危惧すべき事態が。この国、出生率の低下が深刻になっているというのです」
「な、なにい!!」
日本の国民なら子供でも知っているようなことだが、彼らには衝撃の事実だったようだ。
「出生率の深刻な低下……馬鹿な! それでは、幼女が生まれぬではないか!!」
……そして、最悪な結論に達する。
「むうう〜どこまで愚昧な! 素晴らしき幼女を紡いでいく遺伝系統、進化系譜にありながら、それを自ら断ち切るとは!! もはや生物としての存在価値すらもない!!」
モニターに具体案が示される。
作らぬなら作らせようという過激な作戦。深く考えて立案しているのだろうか。
今まで幼女にカチューシャをつけるだのランドセルに縦笛を挿すだのみみっちい活動ばかりが目立っていたが、その片手間で世界中の軍隊を壊滅させたりもしている。
十二分に世界を征服する力を持っているのがタチが悪い。
具体的に、そして本格的にこういう独裁じみた作戦が出てくると、なるも少々不安になる。
『結婚を強制するというのか?』
「左様にございます」
『だが、それでは婚姻そのものを渋るものが現れ始めるであろう。25歳以上は必ず結婚、子作りをせねばならぬよう改法せい。懲役など手緩い。死罰で釣り合いが取れるほどよ』
「はは、仰せのままに、首領様」
子供を作らなければ死刑……だんだん作戦に可愛げがなくなってきた。
「ったく、どーかしてんじゃないの。だいたい、そ、その、子作りさせたって、女の子が生まれるとは限らないんだから」
すっかり冷めたコーヒーを口にする。自分の心はもっと冷めている。……何でこいつらはこんなに暑苦しいのか。
会議に参加していた十二神の一人、ココロユクマデロリがようやく重い口を開いた。
「そういえば、なる」
「何よ」
「お主はライと子作りはせぬのか!?」
ブボーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーとテッポウウオのようにコーヒーを吹き出すなる。
ウォータードリルのようなイカす削岩力で、下っ端戦闘員の眉間に穴が開いた。
「な、ななななな、ななななな!!!! 何言ってんのよ!!!!」
「わーーーーっはっはっはっはっは!! 照れるな照れるな! 今やお前は我がアルティメットロリにとって首領様に次ぐ尊き存在! そして類稀なる才に溢れし幼女!! おまえ自身は変身しなければ幼女にはなれぬが、お前の娘は、史上かつてない、それこそピアニシモと互角以上の幼女になるであろう!!」
会議室が湧く。
崇拝はするが恋は応援する、妙にいいところがあるのが逆に困る。
「わ、私はそんな……そりゃ、10年後くらいはどうか分からないけど……」
「ようし! お前の出産の際には、しっかりと立ち会おうぞ!! アルティメットロリ総員でな!!」
「立ち会うなボケエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ!!!!」
今やアルティメットロリ全ての畏怖の対象であるなるのツッコミ拳が炸裂する。下っ端戦闘員ならば首から上全てが吹き飛ぶほどの威力だが、さすがは十二神のココロユクマデロリ、吹き飛んで壁にめり込む程度で済んだ。……その壁自体が、地球上のいかなる物質をも凌駕する硬度を持つ超金属なのだが。
しかし、なるはふと顎に指を添え考え顔になると、にわかに頬に朱を差し、
「ね、ねえ、あんたら、今の話題、らいちゃんが来たら、もう一度さりげなく振ってくれない?」
もうすぐ雷も途中参加する時間だ。こういう話題をさらっと出して、自分達が男と女であるということを意識させていきたい。
「ははははは! 何だ、率先して作戦参加しようという意気込みか!?」
「ち、違うわよ!! さりげなく、さりげなくね! ちょっといい感じになったら変身してあげるから!!」
飴とムチ。なるも、上に立つものとしての自覚を無意識に持ち始めているのかもしれない。
と、会議室のドアが軽いスライド音と共に開いた。
「遅れました。無事、幼女限定でブルマ浸透計画を戦闘員のみんなに指示してきました!!」
「おう、ライ、丁度いい所に。実はな、なるがお主と子作りをしたくてたまらぬそうだ」
「さりげなくねええええええええええええええええええええええええええええええええええ!!!!!」
ココロユクマデロリの言葉と同じように渾身のストレートが今一度彼に炸裂した。わっはっは、と笑ってはいるが、鼻口以外の顔面のどこかから空気が漏れるような嫌な音がする。
「え、なるちゃん、何を作りたいって?」
「え、あ、あははは! え……と……お菓子、そう、お菓子よ!! 今からお菓子でも作らない?」
引きつった笑いと共に、なるは雷の背中を押し部屋を出て行った。
面々は、首領に至るまで、縁側でじゃれ合う孫を見るような優しい目でそれを見送る。
『フッフフフフ、微笑ましき恋よ。あのいじらしき想いが、なるをさらなるハイグレードな幼女へと進化させるであろう』
「御意に」
幼女は恋することでさらに美しくなる。
アルティメットロリの面々は、なるのいじらしい恋を温かく見守っていた。
見守っているのに、ホワイトピアニシモと戦う以外での負傷者殉職者が増えている気がするが気のせいだろう。
素材が札束かというほど高級感溢れるテーブルにぐったりと突っ伏す少女。日本の経済界を担う黒崎コンツェルンの跡取り娘にして、世界の平和を守るマジカルメイド・ブラックフォルテシモでもある、黒崎ひびきだ。
「はあ……今日もレッドフェルマータと引き分けですわ……これは憂慮すべき事態ですわ、二人がかりでやっと引き分けなどと……」
二人がかりで戦うこと自体にそんなに抵抗があるわけではない。彼女の大好きな特撮番組では、一対多、多対多が常識。
だが、他者に負けるということ自体、幼少の頃から帝王学を叩き込まれてきた自分にとって許されない屈辱なのだ。
「ホ、ホント!? うん、わかった! 楽しみにしてるねっ!!」
そんなひびきの苦悩を知ってか知らずか、今日の戦いの後彼女の家に遊びに来ていたもう一人のマジカルメイド……ホワイトピアニシモ・音弥ましろは、幸せそうにはにかみながら携帯を手に飛び跳ねていた。
今日の戦い自体、幼女にジュースをたくさん飲ませてトイレに行きたくてもじもじする様を愛でるという八つ裂きにしても飽き足らない変態が相手だったため、とてもすぐ立ち直れるような精神状態ではなかったのだが、意を決して憧れの同級生・須高時也に電話をした瞬間、ましろは生命力を回復させていた。
「……どうしたんですの、ましろさん」
「あのねあのねっ! 須高くんとデートする約束しちゃったんだー♪」
「ええっ!? いつの間にそんなに進展してたんですの!? 人が戦局に悩んでいるときに!! この前まで全然相手にされないと言っていたのに……見直しましたわよ!!」
「うんっ! 私達二人、文化祭のクラス実行委員だから、その買い物をしに行くんだー」
ガクッ、と崩れるひびき。
「……それはデートとは言わないでしょう」
それでこんな恋が成就したかのような喜びようなのだから幸せ者だ。
「言うよー! 男と女でおでかけだよー!?」
「それはともかく気をつけることですわましろさん。特撮ではヒーローと一般人が恋に落ちると、高確率で一般人は死にますから」
「不吉なこと言わないでよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「戦いの場に須高君が現れたら要注意ですわ。それがCM明けすぐくらいなら確実に死亡フラグですわ」
「そんなのないもん!!」
涙目のましろを適当にあやすと、ひびきは言葉に出さずにさらに事態を予想していた。
特撮好きなせいで、事あるごとに特撮に絡めようとするのが、ひびきの長所であり短所である。
「ふふっ、でも楽しみだなー二人でおでかけー。さりげなーく手を繋いで、も、もしかしたらキスしちゃったり! わっ、も、もっとすごいことになっちゃったらどーし
よー♪」
自分をかき抱いてきゃーきゃーと悶えるましろ。しかしひびきはそれを決意の目で見つめながら、
「そうなったら私は変身して須高君を殺しますわ。私達の敵と同じですもの」
「どーーーーーーーーーーーーーしてよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
仲間の恋は応援したいが、恋が成就すればその思い人が倒すべき敵になってしまうというジレンマ。ひびきの苦悩は尽きない。
この少女は思春期まっただなかで恋もしているのに、何故身体が丸みを帯びてこずかたくなに幼女体型なのだろうか。
「とにかく!! 私一人であの二人とやり合えるのよ、あと少し戦力を回せば完璧に勝てるじゃない!!」
そして、日曜日の朝。作戦会議が再開されていた。何はともあれ、ピアニシモを倒さなければ話にならない。
「ではお主とライで組んでみてはどうだ?」
「あ、いいね、なるちゃん、一緒に戦おうよ!!」
無邪気に手を差し出してくる雷。子犬のようなつぶらな瞳。その手を砕けるほど握りしめて渾身の力で引き寄せ、窒息するまで顔を胸に埋めたい衝動に駆られたが、なるは500円玉を引き裂くほどの自身の握力で腿を思い切りつねってその欲望に耐えた。
「だ、駄目ーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「え、ど、どうして……?」
そうだ。雷を戦場に連れて行っては、ピアニシモの毒気にあてられてロリコンが進行してしまう。
それどころか、自分も幼女に変身し、二人の幼女の真っ直中に立たされることで、立ちこめ身体を襲う幼気は2乗3乗に高まり、僅かに残された常識もベータ崩壊し完膚無きロリコンとして堕ちてしまうだろう。
「なるちゃん、僕と一緒に戦うのやなの……?」
「う、あ、あ……」
やばい。全ての倫理を撲殺して最終リミッターを踏み潰してしまいそうだ。だが、ここで耐えなければ、自分と雷に輝かしい未来はない。
「ねえ、どうして僕は連れてってくれないの?」
「いや、だから、それは……うう……」
「――――――ヘッ、仕方ねえなあ、俺がいってやるぜ!!」
入り口にいつの間にか一人のロリコンが立っていた。周囲の空気が燃え盛っているかのような凄まじい闘気を感じる。
「むう、お前は……ハテナキロリ!!」
「誰かと組んで戦うってのは性に合わねえが、俺もそろそろピアニシモと手合わせ願いてえと思ってた所だ! 副首領さんよ、俺がパートナーじゃ不満かい?」
「え、別に……」
「ふん、引っ込んでなライおぼっちゃんよ、そんなしまらねえ態度でいたら……戦場に行っても、死ぬぜ。今まで倒された十二神のことを考えてみな」
若干一名なるに屠られた記憶が頭を平泳ぎしている気がするが、とにかく、あれだけ必勝の覚悟で臨んだキワメテロリ達でさえ、手傷も満足に負わせられず散っていった。
自分がなると同行しても、足手まといになるだけかもしれない。
「ちょっと、言い過ぎよ!!」
「ほお、じゃああんたはこいつの子守をしながらあの二人を相手にできるってのかい? 俺は戦友達を次々と葬ったあいつらの力を過小評価しちゃいねえ、自分の命をかばっていて勝てる相手じゃねえんだ!!」
音を立てて炎の闘気が立ち上る。アルティメットロリきっての熱血ロリコンと誉れ高いハテナキロリの熱気は、ともすれば腑抜けそうになっていた一同の心に焼きごてを押しつけるように喝を入れた。
「いいよ、なるちゃん……今の僕じゃ、足手まといになるのは分かっているから。あのピアニシモのついんてーるを見ると、ときめいて足がすくんじゃって……」
「確かにな……あのろりついんてーるは、どんな戦士でも骨抜きにしてしまう魔性がある……今までみなそれで先手を打たれちまった…………だが!!」
パチンと指を鳴らすと、床から人形がせり上がってきた。ついんてーるにした幼女型の人形だ。
「う、お、お主、まさか!!」
「であああああああああああああああああああ!!」
気合い一閃、ハテナキロリが振るった手刀は、見事に二つのてーるを両断した。
「おお……!」
一同から感嘆の声が漏れる。
「ぐ、ぐふあっ!!」
大量の脂汗をかき、膝をついて、ついには吐血だけに済まず全身から血を吹き出す。
「ヘ、ヘヘ……どうだ……見たかよ、俺の覚悟を……ライ」
「す、すごい……」
ロリコン達にとって、目の前のついんてーるを斬るという行為は、自らの臓腑を引き抜くほどの苦痛。並大抵の覚悟でなしえる事ではない。
ここに来るまでに、どれだけの修練を積み、どれだけの地獄を潜り抜けてきたのか。想像を絶する修羅業行であったに違いない。
「これで俺は……ピアニシモに惑わされねえ……今この瞬間だけ、俺は、ロリコンを超えた戦士になる!!」
『見事なり、ハテナキロリよ! 今こそピアニシモを我らがものとするのだ!!』
「そういうわけだ! いくぜ、副首領!!」
「……うん、まあいいわ、行きましょ」
ロリコンでない男と二人っきりで行動するのも雷に申し訳ないが、まあ根本的にロリコンだし大丈夫だろう。
思春期の少女が陥りがちな安易な納得。もっとも、自分の方が強いという打算もあるのだろう。
ともあれ二人は、地球へと降り立った。
「……なるちゃん……」
『悔しいか、ライよ。ならばそれを糧にせよ。鍛錬を怠るな。お前には才がある。ロリコンを極める天賦の才がな。だが、それを埋もれさせるも花開かせるも、お前次第よ』
「……はい! 僕、頑張ります、首領!!」
決意も新たにさらなるロリコンの高みを目指すライだった……。
『ううう〜、どうしよ、ひびきちゃん、緊張してきたよ〜』
「たかだかお買い物にいくくらいで緊張しすぎですわ! もう切りますわよ、始まってしまいますわ!!」
『そんなこと言わないで、須高君が来るまで付き合ってよ〜』
「だいたい集合時間が早すぎますわ! 日曜朝8時は特撮を見なくてはならないのに! デートなんてけしからんですわー!!」
『あ、須高君だー、じゃね、ひびきちゃんっ』
「………………」
高説も半ばに、電話は一方的に切られた。……最近出会ったときと態度が逆転してきている気がするが気のせいだろうか。
「まあ、せいぜい上手く行くといいですわね……」
「はは、それはないよ、ましろちゃんだし」
「……ってシュイーム!? 何でウチにいるんですの!?」
ソファーの上でOPが始まったTVを見ながらパリポリとポテチを頬張っている球体型の生物。
マジカルアイテムの管理者でもある追われ身の王子、魔法生物シュイームだ。
「いやあ、敵が現れたら大変だからついてくって言ったんだけど、置いてかれちゃってさ。仕方ないからひびきちゃんの家にお邪魔しに来たんだ」
「ふざけんなですわーーーーーーー!! ああっ、OPが終わっちゃったじゃありません事!?」
「いつも同じなんだからいいじゃないか……」
「OPもきちんと毎回見なくてはファンの資格はないのですわっ」
ガシャン、と食器が落ちる音がした。
「ひ、ひびきちゃん……」
振り返ると、胸まで伸びた髭が勇ましいひびきの父と、見るからによき母といった容姿のひびきの母、そして(本物の)メイドが硬直していた。
「お、お父様……お母様……」
まずい。どこまで見られてしまったのか。もしこの球体が喋っているのを見られたら……」
「今はひびきちゃんの好きな番組の時間だから、一緒にお茶をと思ったのだけど……」
「ひびき……お前、そんな、ぬいぐるみに話しかけてっ……」
顔を真っ青にして震える父。
「え、あ!? 違いますわ!! これはシュイームなのですわ!!」
幸いシュイームの声は聞かれなかったが、別の誤解をされたらしい。
「そ、そう、シュイームちゃんっていうの……いい名前ね、きっとその子も特撮が好きなのね、フフッ」
必死に笑顔を作るが堪えきれず、夫の胸で嗚咽を漏らす母。
「あなたっ……だから、厳しいばかりではひびきが可哀想だとっ……」
「す、すまぬ……私が……間違っていたようだ……かなで……」
ひびきが生まれてから15年。いや、妻・かなでと結婚してから18年、厳格な夫として信念を貫き通し寄り添い生きてきた、黒崎吼介。
しかし、彼は今、初めて、妻を抱きしめながら自分の非を悔いたのだった。
「ひびき……今日は、父さんと一緒に特撮を見ようか……す、すまないな、子供番組だなどと馬鹿にして……」
「いやいやいやいや違いますわっ! 今まで黙っていましたけど、私は魔法少女なのですわっ! このシュイームは、私に変身アイテムをくれた、宇宙から来た生物ですわ!! じいは知っていますのよ!?」
「…………」
「…………」
「………………」
「あ、ああああああああっ……あなた、ひびきが、ひびきがっ……」
号泣する母と、それを力強く抱きしめる父。メイドも露骨に批難の視線を向けていたが、その無礼を咎めようとはしなかった。
「ひいいいいいいいいい、しゃ、喋って! もう全部バラしますから、喋ってくださいなシュイームーーーーーーーーーーーーーーー!!」
シュイームは、ぬいぐるみのフリをしながら、100インチプラズマTVで特撮を堪能していた。今回は準主役が新フォームになる回。1秒たりとも見逃せない。
吼介は携帯電話を取り出し、
「飛書君、済まないが、今日の役員会議はキャンセルだ。どうしてもなら、私抜きで進めてくれたまえ。……すまない、電話もできない」
「お父様……?」
「ようし、ひびき、父さんとヒーローショーに行こうか!」
「お父様何故そんな手術前の怯える子供をあやす親のような優しい顔をーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「お母さん、久しぶりにお弁当作るわねっ。ふふ、家族3人ででかけるなんて、ひびきちゃんが小学生の頃以来かしらっ」
「よかったですね、ひびき様……」
「いやああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」
この日初めて、ひびきは、リアルタイムで番組を全部見れなかった――――――。
「す、須高君、次はどこ行こっか!」
「え、必要なものは全部買ったけど……帰らなくていいの?」
「………………」
つれなすぎる。顔は笑っているがさすがのましろでもいろいろ考えてしまう。
既に彼女がいて長居はまずいのだろうか、とか、彼女といわずとも好きな子が別にいるのかとか、そもそも自分は女として見れないというのか。
「お、お昼御飯! お昼食べていこうよ、私もうお腹ペコペコで!!」
「はは、ましろちゃんらしいね」
引き延ばしには成功したが、やはり自分のイメージは元気のいい子供という感じのようだ。複雑な心境になる。
「ハンバーガーでいい?」
「え、いいけど……もう少し……」
あまり気取ってもかえって逆効果だが、それでも初デートなのだからもう少し雰囲気のいい店にしたかった。
それでも須高が選んだのだから、とましろは気持ちを切り替えてファーストフード店に入っていったが……
「お客様、困ります!!」
「いいから出せい! 幼女一人! お持ち帰りでだ!!」
――――――ロリコンがカウンターでイチャモンをつけていた。
ガラス戸に頭から突っ込むましろ。
「あ、アルティメットロリーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「……む!? ほう、これは単刀直入に天晴れな幼女……! 腹ごしらえをしに来てみれば、至高のランチにありつけたわ!!」
「きやーーーーーーーーーーーーーヘンターーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーイ!!」
「ましろちゃん、逃げるんだ!!」
かばおうとするが、あっという間に吹っ飛ばされる須高。
「うわあーーーー」
「須高君!!」
『一般人の恋人が戦場にやってきたら……』
ひびきの言葉が頭を過ぎる。
「ッ…………!!」
温厚なましろの堪忍袋の緒が切れた。
「さあ、パーフェクトグレードな幼女よ、テイクアウトされるがいい!!」
「この……変態が……須高君に手を出すなあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」
須高が吹っ飛ばされた事で店員も客も既に逃げていた。須高も気絶している。遠慮はいらない。
ましろは一気に変身すると、目の前の変態を成層圏の彼方まで吹き飛ばした。
「ぐああああああああ…………ド○ルドマジィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーック!!」
「お掃除かんりょ…………」
「――――――そうはいかないぜ!!」
遙か空の彼方から声が響き、自身が開けた穴から一気に光が降り注いできた。
光はハテナキロリに姿を変え、その直後降り注いできた火の玉はレッドフェルマータとなった。
「なるちゃ…………レッドフェルマータ!!」
「今日は一人なのね……丁度いいわ、今日こそあなたを倒してライちゃんの心を取り戻す!! さあ、ハテナキロリ、特訓の成果を見せてあげなさい!!」
「ぐはあああああ……や、やはり人形じゃ駄目だった……! 本物のロリツインテールを前にしたら、全身の血が沸騰しちまうぜええええええ」
「全部血ィ抜いたろかこの役立たずがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」
「うわ! あんたもついんてーるじゃないけどすげえ幼女じゃねえか! 俺の身体が熱く燃えさかっちまうぜええええええええええええええ」
「燃えろアホがーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
火球でツッコミを入れる。吹っ飛びはしたが絶命はしていないようだ。
「―――――― 一対一で勝負よ、ピアニシモ!!」
続く――――――?
|
|