注意です
大したことじゃないんですけど一応…
これは凛END後ですのでネタバレを含むのはもちろん桜ENDのネタバレも含みます。
しかも勝手な設定が多々あります。ですから正確な凛END後ではありません。
そこのところを十分承知の上で読んでください。
私は責任取りませんからね?
これが若さだ!
――学校・入り口前――
いつもどおり学校への登校中に学校の入り口で中を窺っている怪しい男を発見……
「何やってるんだ慎二?」
「!!……なんだ衛宮か、驚かすなよ」
首の耐久度の限界を軽く振り切ったような速度でこっちへ振り返る慎二。
まあいつものことだ。
「別に驚かしたつもりは無かったんだが……そうか、すまなかった」
「………まあいいさ」
謝ったというのに不機嫌な顔を向ける慎二。
これもいつものことだ。
「それでわざわざ入り口の前で何やってるんだ?」
「衛宮、今日が何の日か知らないわけじゃないだろう?」
「今日? …………ああ、バレンタインか」
「忘れてたのか? まあお前じゃあ一つも貰えないだろうから知らなくても問題なかったな」
たしかに忘れていた。
でも今はテスト目前なのだ、忘れていてもしょうがないと思う。
しかし俺も男だ、思い出した以上は気になる……だがそれ以上に――
「それで入り口の前に突っ立ってるのとバレンタインに何の関係があるんだ?」
「……………………まったく……アレを見てみろ」
慎二はまだ気付かないのかコイツ、と言った呆れ顔をしているのだが
バレンタインと慎二が入り口付近で怪しかったこととはまったく接点が無いのだから仕方がないと思う。
きちんと説明して欲しいのだが……なるほど――
「――なるほど、お前の靴箱のトコロに人の群れが出来てるな」
「そういうこと。もてる男は大変なのさ」
慎二の靴箱の前で靴箱にチョコを入れようとしている女生徒達と、
それとは別におそらく直接慎二に渡そうと靴箱から少し離れた女生徒達とで二つの集まりが出来ている。
「ふーん、まあオレには関係ないことだな。じゃあ遅れないように気をつけろよ」
「っ―――!! ふ、ふん、言われなくてもそのつもりだ!」
俺が慎二のもてっぷりに一切興味を示さなかったのが気に障ったのか、ややキレ気味である。
あのぐらいで激昂するとは……相変わらず精神鍛錬がなってないヤツだ。
本当にあんなんでマキリの後継者になるつもりなのか?
慎二はまだ入り口の前で何か喋ってるようだが、まあいい。
しかし慎二にはああ言ったが俺もまったく気にならないわけではない。
「まさか俺のトコには……無いよな」
俺は自分でもみみっちいな、と思いながらも微かに期待を込めて靴箱を覗いていた。
いや普通は食べ物なんだから靴箱には入れず手渡しだと思うのだが
先ほどの慎二の靴箱の光景に……ほんのちょっと憧れてたのかも。
「……そうだよな、なにを期待してんだオレは」
そうだ……中学生の頃はいくつか義理チョコをもらったことはあったが
高校生になってからというもの、義理チョコさえも無く0個だった。
やっぱり俺の顔って無愛想に見えるんだろうか?
肩を落とし落ち込み気味で廊下を歩く士郎から少し離れた靴箱の陰に人影が一つ……
「先輩……先輩は私が守ります」
そういう彼女の手にはいくつかチョコがある。
そう何を隠そう…去年から士郎のチョコの数が0になったのはひとえに彼女――桜の力である。
そのバイタリティや恐るべし……
普段にも増して今日と言う日に衛宮士郎へ近づこうとする女生徒全てに対し
持ちうる全ての力を使い、略奪してしまうからである。(強盗、窃盗の類は犯罪です)
もちろん去年の桜はまだ中学生なのだがそこは推して知るべし。
「あんたね……」
その桜の後ろで腕を組み、呆れ顔の女性がいる。
「なんですか? いけないんですか? いくら姉さんでも先輩は譲りませんよ?」
桜に姉さんと呼ばれた女性――当然凛に他ならない。
現在凛は士郎の家に住んでいるのだが当然桜が黙っているはずも無く、もちろん桜も下宿している。
下宿について士郎は反対したのだが意外なことに凛が賛成したのである。
その理由が妹と一緒に暮らしたい、これから姉らしいことをしてやりたい、というものであり
士郎は凛と桜が姉妹なのに驚きこそすれ断れるはずが無かった。
もっともそこに凛の思惑が無かったわけではない。
妹想いな所を見せることで士郎の気持ちを近づけようとしたのである。
「桜の好きにしたらいいわ……それに譲ってもらわなくてもいいわよ(あいつは私の僕だし)」
今日の桜はストーキングに励みすぎて警察の厄介にならないようにと
実の姉として溜息をつきながらも、その内面には自分と士郎の関係で優越に浸る貌があった。
――夜・自宅――
「結局学校では0か……」
すでに夕飯も終わって洗い物をしながら一人ごちる。
「義理チョコくらいは貰えると思ったんだが……」
今年も去年と同じで、一人からもチョコが貰えずどうにも気分が沈んでしまう。
「でも……まあいいか」
そう…考えてみれば今この家には桜と遠坂が住んでるしセイバーも一緒だ。
それに藤ねえだって毎日のようにご飯を食べに来てる。あれで男子に人気はあるし……
よくよく考えれば俺って幸せ者なんじゃないだろうか?
自分の状況を客観的に判断してみて、同年代に対して優越感に浸り、
洗い物のスピードも自然と上がる。
その結果、普段の半分程度の時間で洗い物が終わってしまい
暇をもてあました俺は居間でテレビを見ながらくつろいでいた。
すると遠坂が辺りを気にしながら居間に入って、俺に近づいてきた。
「遠坂か、どうした?」
「衛宮君、桜は?」
「桜ならさっきお風呂にいったみたいだけど…桜に用事か?」
「ううん、違うの。衛宮君に、ね」
こころなしか遠坂の瞳が潤んでいるような気がする。
それに少しだけど顔が赤くなっているような……
「俺?」
「そ。今日は、その…2月14日でしょ…だから、その、ね?」
瞬間、体の外に心臓が跳ね上がり、躯も焼き尽くされた。
全ての思考が奪われて、新しく与えられたのは『期待』という一つの感情だけ。
俺は気持ちを抑えきれずに考えたこと、思ったこと、その一言を遠坂に伝えた。
「もしかして…その、俺に?」
「あ、当たり前でしょ、一応…その、私は士郎の『マスター』なんだし……」
その言葉が遠坂なりの精一杯の愛情表現だということを俺は知っている。
だから止められないし、止まるつもりも無い。
「そ、それで少しの間目をつぶってて」
「へ?」
……止まらないはずなのに無理矢理止められた。
「いいから言うとおりにする!」
「あ、ああ……」
再び遠坂の声に反応して思考をリセットされる。
それでもこういうときの顔を赤くしてガーッと怒る遠坂も可愛い、
などと考えてる辺り、なんだかんだで余裕があるのかもしれない。
「まだか遠坂?」
「ま、まだよ…それよりいいって言うまで目を開けないでよね」
「? わかった」
遠坂の顔を見れないのは少し残念だが、
何をされるのかわからないと言うのもなかなかいいかもしれない。
それに目をつぶっているのではっきりとは解らないが
遠坂がなにやら準備をしてるらしい――――と突然、
「お、おい!」
遠坂のやわらかい両手で顔を挟まれ、その感触につい声を出してしまった。
「いぃからぅごぁなひで」
「いいから動かないで、だそうですよシロウ」
「「!?」」
なぜ遠坂が舌ったらずだったのかとかも気になるが、
それよりもこの状態で第三者の声が聞こえたのだ。
俺は顔を遠坂の手から逃れるように体ごと後ろへさげて、同時に目も開く。
「二人とも顔が紅潮していますし、脈拍も速くなっていますが大丈夫ですか?」
「っ――! い、いつからそこにいたのよ!」
すると遠坂の頭越しに何食わぬ顔で立っているセイバーがいた。
遠坂は何か口に入れていたのか少し言いよどんだものの、その何かを飲み下し、
顔を真っ赤にしてセイバーに食って掛かっている。
「凛が口に何か含んだところからですが?」
「口にって……何するつもりだったんだよ遠坂」
「〜〜〜〜〜〜!!」
すでに顔の赤さが限界まで達していた遠坂は、セイバーの答えとそれに対する俺の一言を受けて、
遂には湯気を出し、口を開けて固まっている。
「そ、それでセイバーは何しにココに?」
これ以上遠坂の行動を追及すると後で大変なことになりそうなので話題を変える。
「はい、さきほど大河から2月14日は特別な日だと聞いたのですが、
どう特別なのかは教えていただけなかったのでシロウに聞こうと思いまして」
「「そ、そうなんだ」」
「それで先ほどの凛の行動から推測するに、口移しでモノを食べさせる日なのですか?」
「なっ!?」
セイバーの口移しと言う言葉に過敏に反応してしまった、
というかやっぱりそういうことだったんだな遠坂。
でも少し期待してただけにショックだよセイバー。
「そ、そうよ。2月14日は女性が男性にモノを口移しで食べさせるっていう日本独自の文化なのよ」
しかし遠坂は引けなくなったのか、あるいは今の行動を正当化するためか
とんでもない嘘をついてこの場を乗り切ろうとしている。
「そうですか、では私も……」
「え、ちょっ!待ちなさい!!」
「ま、待てって!セイバーは日本人じゃないからいいって!」
俺もどうしようもなく、ついつい遠坂に倣って滅茶苦茶な文化を容認する。
だが言うが速いか、セイバーはすでにお茶請けの饅頭を手に取っている。
「私とて郷にいれば郷に従え、という諺くらい知っています。
ですから日本の文化に従いたいと思います」
「待ちなさいセイバー!
あなた以前に自分はサーヴァントだから性別は関係ないって言ってたでしょ!」
だがセイバーはマスターである凛の言うことに耳を貸さず、すでに饅頭を小さく一口含み
両手を"わきわき"させながら俺ににじり寄ってきている。
その雰囲気に気圧され立ち上がることも出来ず、壁際まで追い詰められたネズミこと俺。
窮鼠猫を噛む、などという諺があるが対するは百獣の王であるライオンことセイバー。
まさに絶体絶命状態。だがセイバーはそんな俺を見てどう思ったのか近づくのを止め、
諭すように妖しい貌で囁いた。
「安心してくださいシロウ、私も男性の喜ばせ方は心得ていますので」
「よ、よろしくお願いします」
「士郎!」
俺は不用意にも思ったことを口にしてしまい遠坂に睨まれる。
遠坂が俺を睨んだことでセイバーに対する注意がわずかに逸れ、
その隙を好機と見たセイバーが一気に間合いを詰めてきた。
遠坂は反応が遅れ、俺は反応できずどうしようなく――その突進力はサーヴァント戦の比ではなく、
英霊も欲に走っているときが最大限の力を発揮できるんだなー、などと冷静に判断(現実逃避)していた。
瞬間――
ゾブリ――と 背筋 を 喰われた
「う、あ――――っっが、あ……あーーーーーーーーーーーーーー!!」
「あぅ……っ!!」
「―――――――」
遠坂はセイバーの反応に遅れたのが幸いしたのかいち早く気付いたのだろう。
その場から脱出するために全力で跳び、肩口から壁に激突して崩れ落ちたようだ。
うめき声はその痛みから出たものだろう。
問題はセイバーだ、一言も発しなかった。
俺は痛み以外の無い体を動かし顔を向けると……
「どうしたんですか先輩?」
そこには桜がいて――
「ああ、そうか。ごめんなさい、先輩も巻き込んじゃいましたね」
セイバーを――
「うん、これでもう大丈夫なはずです」
「さ、桜――」
「どうしました?」
片手で持ち上げていた――
……あの大人しい桜が本気で怒っていた。
桜の手はセイバーの首を締め付け、セイバーは声も出せず、呼吸も出来ずに顔色が悪くなっている。
「あ、ちょっと待っててくださいね」
そういうと桜はセイバーを一瞥し―――
「えいっ♪」
めきょ!
なんともおかしげな音がした……それもセイバーの首から…
その光景に放心したがすぐに――
どさっ
――という音がして意識を取り戻した。
桜がセイバーの首から手を放して床に落とした音だった。
なんかセイバーがビクビク痙攣している、かなりヤバイんじゃないだろうか?
あ……セイバーの体が薄く――
「――って、わーー!? 逝くなセイバーーーーーー!!
ああぁ遠坂は気を失ってるしどうしたらー!!??」
「それならこうすれば大丈夫です」
桜はそういって気を失っている遠坂のついんてーる(右)を掴み、引っ張ろうとしていた。
「桜、そんなことしたら!?」
そう…ついんてーる(右)を掴むと言うことはついんてーる(左)が下になる。
当然そのまま引きずるなどという行為は
ついんてーる推奨及び保護委員会員として黙認できることではない。
だから俺はついんてーる(左)を保護するためついんてーる(左)を持ち上げた。
桜はそんな俺の想いも知らずに遠坂をセイバーの近くまで引きずると、
今度は遠坂の体を持ち上げ――
「お、おい桜!」
「セイバーさんを助けるにはコレが手っ取り早いんですよ」
――遠坂とセイバーに口付けをさせた。
「あ……」
口移しで遠坂の魔力を無理矢理セイバーに流し込んだってことなのだろうか?
とりあえずは桜の行動のおかげでセイバーの体は元通りになり顔色も良くなってきている。
もっとも薄くなったり顔色が悪くなったりしたのも桜のせいなんだが……
「先輩、二人を休ませたいので先輩の隣の部屋をお借りしていいですか?」
「あ、ああ。そうだな。」
「じゃあ私がセイバーさんを連れていきますから、先輩は姉さんを連れてきてください」
「わ、わかった」
すでに20時を過ぎていたため、
桜が二人を寝間着に着替えさせるからと俺だけ居間に戻ってきて一時間。
いくらなんでも遅いと思うのだが……
それに藤ねえもセイバーと話をした後挨拶もせずに帰ってしまったようで誰もいないし……
結局藤ねえからもチョコはもらえなかった。
それに藤ねえとは昔から一緒で家族のようなものだからチョコをくれとは言いづらいしな。
「先輩……」
「ずいぶん遅かったなさく…ら………」
後ろから桜の声がして振り返る。
桜は今も笑顔だ……ただ先ほどの笑顔とは違う。
笑顔には違いないのだが雰囲気というか空気というか……
いまさら言うことでもないがさっきまでの桜はかなり怖かった。
あの笑顔を向けられると反論どころか抵抗すら出来ない。
だが今の笑顔は逆に吸い込まれるとでも言おうか…まるで甘い蜜のような、そんな雰囲気がある。
だからだろうか…桜をはっきりと見たくて知らずに立ち上がっていた。
桜が右足を出すたびに心臓が跳ね上がり、左足を出すたびに心臓が締め付けられる。
いつの間にか桜は目の前――桜が顔を上げ、俺が顔を下げると唇が触れる、そんな距離――にいた。
「先輩、今日は14日です。……その、知ってますよね?」
「あ、ああ…その、バレンタインだろ……」
桜は俯いたまま俺と、俺は必要以上に上を向きながら桜と会話する。
「それで、その……」
「………その…チョコ、くれるのか?」
「あ………」
「?」
「えと……チョコ作ろうとして失敗しちゃって………」
「……そうか」
桜はかなり我慢強く、辛さや痛みを表に出すことはまず無い。
しかし人を信じやすく騙されやすい。
なにより嘘をついてもすぐにバレる。
多分チョコを作ろうとしたと言うのは嘘なんだろう……
でもそれなら何故バレンタインの話を? と聞こうとしたらその前に桜自信が教えてくれた。
「だから…その……チョコの代わりに…………」
「え………」
「わ、私じゃダメですか!?」
告白と同時に桜が抱きついてきた……つい桜を抱きしめそうになり躊躇する。
そう俺には遠坂がいるから……だから桜には応えられない。
桜の肩に手をかけてゆっくりと引き離す。
俺は桜の顔を見ることが出来なくて、桜に背を向けて話しかけた。
「その…俺には遠坂がいるから……」
「…………」
桜は応えない…やはり泣いているのだろうか?
俺が桜の泣き顔を見たくなくて背中を向けたが桜は勇気を出して俺に告白してくれたのだ。
……そうだ、つらくてもしっかりと彼女と顔を向かい合わせて伝えなくてはいけない。
「だから――――」
俺は言葉と同時に振り返って――言葉を失った。
そこにいたのは居間に来たときと同じ笑顔の桜がいた――下着姿で。
だが驚くべきことはそれだけではない。
むしろ笑顔や下着姿は食前酒と前菜……
いや今の桜を言葉で表現するならばありのままを伝えるしかない……
――――――――――――ついんてーるだった
「先輩の部屋に行ってもいいですか?」
「ああ、一緒に行こう」
ああそうだ。
別にいまさらこだわる必要も無いし、あれから遠坂とは何も無いし、
セイバーは魔力が足りないとかでよく部屋に忍び込むし、
朝起きたら俺は知らないのにセイバーと二人きりで裸で寝てることも"よく"あるし……
それに普段から人のいうことを聞かないで
自分の思い通りにならないとガンドを撃ってくる凶暴な女より
献身的に尽くしてくれる女性のほうが良いに決まってる。
だれも俺を責めたりはしない…うん、そうに決まってる。
俺の部屋にはすでに布団が敷かれていた。
初めてみる布団だったとか、一組しか敷かれてなかったとか、そんなのは些細なことだ。
父さん、母さん、オヤジ、生まれて初めて彼女が出来ました。
え、遠坂? 契約?
………上書きしました♪
後書き
ココまで読んでくださった御仁、ありがとうございます。
そしてはじめまして。BBCといいます。
どうにもヘタレなのでままならない部分も多々あったことと思いますが出来る限り
何とかしてみたつもりですのでどうかご容赦ください。
え、オチ? そんなの無いですよ?
はっぴーバレンタインだったでしょう?(微笑)