暖かい。

この部屋は朝日が入り、いつも朝だという事を思い知るぐらいに日差しが差し込み、それは季節が変わろうとも暖かく包んでくれる。

今日はそれに加えて寝床が暖かく、とても寝心地が良い。

季節的には、これから寒さへと向かう筈なのだが。

そんな温もりを堪能して、再び布団に潜り込もうとして気付いた。

何か居る?

ふぁさ……

「!!!!!!!!!!!!」

捲った布団の中に居たのは、全裸の少女。

そう、弓塚さつきだった。






想いは平和な日常に
3 実現





思わず大声を出しそうになるが、何とか自制する。
ここで叫ぶと、とてつもなく困った事態へとなってしまう。
そうだ、先生も言っていた。よく見て、よく考えてって。
まずは眼鏡をかける。
そして、よく見て、よく考えて…………
よく見て……
よく……

――――――――――(真っ赤)

「見れるかーーーっ!!!!」

先生、ダメでした。朝日に照らされた同級生の裸体なんて………… へー、弓塚さんって結構肉付きがいいんだなー、胸とか。
じゃなくってっ!!

冷静に見れません。
だから、考える事から始めます。

「そうだ! 夕べ、アルクェイドに夢で呼ばれて弓塚さんにあったんだ。そして帰って来れるように契約……をしたんだっけ。」

うん、そこまではわかる。

「で、起きようとしたら隣に弓塚さんが全裸で……か。」
「正確には志貴様が惰眠を貪ろうとした時にその女性に気付いて全裸を凝視しておられたのです。」
「!?」

驚いて振り向く。
そこには、冷め切った表情の翡翠がこっちを見て立っていた。気配など全く感じさせなかった…………

「ひ、翡翠! 一体いつからそこに?」
「先程からずーっと居ました。志貴様がお気づきにならなかっただけです。」

翡翠の声は冷たい。
そりゃそうだろう。何せ、全裸での同禽…… うわっ!? 俺も裸じゃないか!?
不味い。これは不味すぎる。
翡翠から見ると、俺が乱れた生活をしているように見えるじゃないか!

「志貴様、十分に乱れております。」

何か読まれているし―――――――――――っ!!!

「あの、翡翠……さん? これには事情があってだね……」
「事情ではなく、情事であると思われますが?」

凍てついたような翡翠の視線……
翡翠の態度は限りなく冷たい。指チュパだけでは許してもらえそうにも無い。

ニゲロニゲロ……

心の中からそんな声が聞こえる。七夜の血が危険を警告しているのか?

「翡翠…… もしかして怒ってる?」

震える声で思わず聞いてしまう。そんな事、聞かなくても解るだろうに…… 動揺しているとはいえ、何を聞いているんだ、俺は?

「いえ、私は志貴様に御仕えする身ですから、そのような事は思っていても決して露には致しません!」

喧嘩を売っているような台詞に加えて、こめかみに血管が浮いているのがはっきりと見える。極め付けに怒ってるじゃないか! 
しかも、何のフォローにもならない……むしろ、余計に追い込まれたような?

「お召し物はこちらに置いておきます。その方の物は姉さんに用意してもらうように先程伝えております。」
「こ、琥珀さんにまで知られたのか!?」
「はい、先程アルクェイド様がいらっしゃった時にアルクェイド様もその女性を確認しておられたので事情を伺ったでのすが、志貴様がお目覚めになられてからとのことでしたので姉さんに話して段取りを済ませておきました。」

俺が寝ている間に、恐ろしい事が進められていたような気がする。
アルクェイドも何らかのフォローをしてくれればいいものを……

「翡翠。段取りってのは何の事だ?」
「その女性の事を伺う準備の事です。まずはその方のお召し物と朝食を御用意させて頂きまして、食事をしながら詳しく伺うと仰っております。」
「仰るだって?」

とてつもなく嫌な予感。

「はい、秋葉様が。」

ぐああああああああああああーーーーーーーーっっっ!!!
今日も朝から尋問が始まるのか!!

「そういう事ですので、下で皆さんがお待ちしております。」

そう言って退室する翡翠。











コンコン……

「志貴さん? お目覚めですか?」
「こ、琥珀さん?」
「おはようございます。志貴さん、やっちゃいましたねー♪(笑顔)」
「いや、こ、これには事情が……」
「秋葉様と一緒に後で御伺いしますよ。観念してくださいねー♪」

その笑顔の中で目だけが笑っていないのは気のせいでしょうか?

「そういえば、シエル様が居ないのは志貴さんにとって幸いでしたねー、チッ!」

ニゲロニゲロ……

「あはー、逃げられませんよ。秋葉様が檻髪を使っておりますから。」
「え!?」

再び眼鏡を外し窓を見てみる。

そこには、窓の形すら解らないほどに紅い線が走って……いや、絡みついていた。
なるほど。既に秋葉の手の中か……

「そういう訳ですので、下でおまちしていますねー。これ、その方の御召し物です。寸法はこれでいけると思いますので。」
「ああ、ありがとう。琥珀さん。」
「いいえ、これから大変ですよ。頑張って申し開きをしてくださいね。私が出来るのはここまでです。でも、私も少しは怒ってるんですよ。」
「すみません……」

さて、どうしたものか…………
本気を出せば逃げ出す事も可能だ。だが、下にはアルクェイドも待っている。
アルクェイドが好意(?)で弓塚さんを連れて来てくれたんだ。
アイツを無碍には出来ない。するつもりも無いが……………






「ん、んんー」

眠っている弓塚さんが、もそっと動く。
そろそろ起きそうだな。翡翠が俺を起こす時はこんな感じなんだろうか?
何だか可愛いと言うか、あどけないと言うか。
包み込んであげたくなってくる。

「んー、すぴぃ―――――――――」

あ、また寝た。ポカポカしていて気持ちいいみたいだ。
ニコニコして丸まっている。

ぷにっ

思わずほっぺを指でつつく。
―――やわらかい―――
すると反射で眉毛がピクリと動く。それが面白くてつい悪戯をしたくなる。

ぷにぷに……

って、実際にやっているのだが。

「ん、ん、んー、ん?」

ボーっとした表情で弓塚さんが目を開ける。

「志…… 遠野くん?」
「志貴でいいよ。おはよう、弓塚さん。」
「志貴くん? 志貴くん…… 志貴くん!」
「うわっ!」

裸のままで抱きついてくる弓塚さん。
こりゃ夢の中と同じだな………… あの時は裸ではなかったけど。
そう思いながらも、弓塚さんを受け止めてあげる。

「志貴くん! 夢じゃないんだね? 本当に帰ってきたんだよね??」
「ああ。おかえり、弓塚さん。あの時は守ってあげられなくてごめん。」
「志貴くんは助けてくれたよ。だって、あんなになった私を人として扱ってくれたし……」
「あの日、君を逝かせて思ったんだ。俺、ニブいから…… 気付いてあげれば他に出来る事があったんじゃないか?ってね。」

身体を離して弓塚さんが俺の顔を覗き込み、じ―――っっと見つめる。
そして、優しく微笑んで言葉を続けた。

「その気持ちが嬉しいの。今もこうして志貴くんに助けてもらったしね…………」

助けるつもりが、こうして励まされるとは…………
クラスでアイドル視されるのも頷ける。

「それに夢の中でいっぱいイカせてもらったし♪」

それを言うか? そんな事を言う娘では無かったような?

「………… 弓塚さん、性格かわったね? 臨死体験……いや、死んだら価値観変わったの?」
「え? そんな事ないよ。今まではね、周りに遠慮ばかりしてきたの。自分で楽しむ事も無く死んじゃったしね……」

少しかげりのある表情で、そう呟く。
でも、すぐにパッっとした笑顔を向けてくる。

「だから、今度は悔いの無いように、自分で夢を叶える様にしようって。だから良い娘でなんて居られない。覚悟してね、志貴くん♪」

そんな前向きな心構えの弓塚さんは、すごく魅力的だと思う。最後に付け加えた台詞が微妙に気になるが。
しかし、こう言われて俺はどんな顔をすればいいのだろうか?

「きゃっ♪ 私たち、裸じゃない!?」

今ごろ気づいたのか。延々と話していたのに。

「志貴くんのHぃ―――♪」

何で俺なんだ―――――っ! っていう心の叫びは彼女には届かない。
彼女は胸と口に手を当てて、『いやん、いやん』と首を振る。何故か、すっげー嬉しそうな表情だ。
首を振るたびに揺れる胸と髪が俺の理性を貪るのですが…………

 あ――――――――――

今気づいたけど、ツインテールじゃないんだ…………
ま、考えれば当然か。今まで存在しなかったんだから。
服が沸いてくるわけでもないし。

とにかく琥珀さんに用意してもらった服を着てもらわないと…………
















「ねえ、志貴くん。どうして妹さんに報告しなきゃいけないの?」

服を着おえて、一階で待つ秋葉達に弁明すべく部屋を出る。
色々と問題はあるが、秋葉達には世話になりっぱなしなのでこういう時には気圧される。

「ウチの当主………………家長みたいなもんなんだ。ほら、俺って有間の家に出ていたりしただろ? だから長男とは言え、秋葉の方が力があるんだよ。」

ちょっと、解りにくい説明だったのかも。
弓塚さんには通じなかったようだ。
今も不思議そうに首を傾げている。

「お金持ちって、大変なんだね………… 大丈夫かな、私? ちゃんと、やっていけるかな?」
「ちょっと高圧的に感じるかもしれないけども大丈夫だと思うよ。」

言葉の最後の方に疑問を感じたのだが、そう答えておく。
秋葉の正体なんぞ、言えるわけがない。
『好きな飲み物は?』と聞かれて、『O型が甘くておいしい』と本気で答えるような妹を詳しく語るなんて…………

「それとも遠野の一族だから?」

知っているのか!? 何故?

「どうして知っているのかはわからないけど、それはそのうちにゆっくりと話すよ……ね。」















「あ、志貴がきたよー。」

能天気なアルクェイドの声が聞こえる。
その声に反応して全員が一斉にこちらを見る。

「あ、あのー…………」

やっぱり弓塚さん、引いてる……
こうなるだろうとは思っていたが、いきなりかよ。
アルクェイドは………… 笑ってやがる。
くそ、何が可笑しいってんだ?

「兄さん、私たちが何を言いたいかはもう御存知ですよね?」
「ああ、話すと長いから掻い摘んで話すぞ。」
「ええ、ですが不審な点がありましたら切り込みますので。」

話し合いではない。
殆ど裁判に近い。
人助けとはこう言うものか。

「彼女は…………」
「「「彼女!?」」」

秋葉と翡翠、そして琥珀さんまでもが声を揃えて反応する。
文章的にも、まだ主語しか言ってないぞ?
何故それでいきなり責められるんだ………… 琥珀さんは楽しんでいるようだが。

「いちいち話の邪魔をするな。止めてもいいのか?」
「続けなさい。」

少し怒ったように言ってみたが、秋葉の高圧さには勝てなかった。
ちくしょう、たった一言に…………

「彼女はクラスメイトなんだ。」














「それで?」















秋葉の目は獲物を狙う野獣の目だ。
そして、その獲物とは弓塚さんではない。
間違いなく俺だ。


















「言い難いから、これだけじゃダメか?」
「ダメに決まっているでしょう!!」

やっぱり。
秋葉ならそう言うと思ったよ。
でも、それはお前に気を使ったんだぞ?

「わかった、きっちりと言おう。ロア……っていってもわからんだろうな。四季にとりついた亡霊みたいなもんだが。その四季に彼女は殺されたんだ。」
「「「!?」」」

秋葉を始め、翡翠と琥珀さんまでもが息を呑む。
だから言ったのに。

「四季に血を吸われて彼女は人間ではなくなったんだよ。そのあと、俺が彼女に止めを刺した。」
「「「…………」」」

流石に言葉も無いようだ。
無理も無いだろう。
身内が原因で人に迷惑を掛け、死人まで出しているんだ。
で、その被害者が目の前にいるのだ。これで何とも思わない方がおかしい。

「で、アルクェイドが好意で彼女を助け出してくれたって訳だ。」






よし! 会話の主導権は握った。このまま一気に…………

「あのー、少しいいですか?」

遠慮がちに問う琥珀さん。

「はい? 何ですか?」
「どうやって助けたのでしょうか? 既に亡くなっておられたのでしょう?」

…………痛い。痛いところを。
ま、普通はそう思うかもな。

「契約よ。人としては生き返れないから使い魔として契約する事で還ってきたの。志貴とね。」

アルクェイドが助け舟を出してくれる。
よし、いい感じだ。

「そうすると、契約者からの魔力供給で使い魔は生きる事が出来るの。熟練すれば、他の経路からの生命力の確保も出来るんだけど、今はまだ無理だからね。」

秋葉に略奪の能力があるからその辺りは何となくでも理解できるだろう。

「でも、殆ど人間のままでこの娘は死んだから、志貴からの供給も確保できないの。だから、暫くは志貴との契約を定期的に更新しなくちゃいけないの。解った?」

それは、初耳だった。そうか、更新………… え!?
それじゃ、定期的にアレを…………
振り向くと弓塚さん、顔を真っ赤にして俯いている。けど、……笑顔!?

「その契約というのはどのようなものなのですか?」

それまで無言だった秋葉が問う。そんな事言えるかー!

「んーっとね、一言で体液交換かな?」
「「「!!??」」」

ヤバい。身の危険を感じる。
戦時中の人の心境とはこんな感じなのだろうか?
早く避難しなくては。いや、いっそ疎開した方がいいかも。

「まー、レンの時と同じかな?」
「レンって、あの猫ですか!」
「志貴さま、猫とまで??」
「志貴さん、見境ないですねー。」

あ、忘れてた。こいつらレンの事を知らないんだった。
って事は…………

「ちょうど良かった。レンおいでー」

アルクェイドに招かれてやってくるレン。やめろ! 極めつけに嫌な予感がする。

「レン、変わって。」

ぽんっ

目の前で少女の姿に変わるレン。
皆の目が点になる。

「こういう事。流石の志貴も猫とじゃあ、無理だもんねー、あはは。」

ダメだ、もうここには居れない。逃げよう。それしか生きる道はない。そしてジプシーとなるのだ。

!? 

振り返った俺の前に弓塚さんが立ちはだかる。
どういう事だ?

「どういう事?」

先に弓塚さんに問われる。俺が聞きたいぐらいだ。

「私だけを愛してくれると思ってたのに………… あんな小さい娘にもなんて!」
「待って、弓塚さん? 今の君って秋葉並に怖いんだけど?」
「まー、いいじゃん。私なら大丈夫だよ?」

能天気なコメント。こんな事が言えるのはアルクェイドをおいて他にいない。

「誰が志貴を好きになろうとも、最後に志貴が私の事を選んでくれたらいいから。」
「アルクェイドさん、貴女はいったい?」

弓塚さんも疑問に思ったようだ。そういや彼女にも紹介してなかったな。

「私? アルクェイド・ブリュンスタッド。あ、名前はもう言ったかな? で、志貴の恋人よ。」
「「「「!!!♪???♪」」」」

弓塚さん、秋葉、翡翠、が息を呑む。やはり、はっきりと言われると衝撃になるようだ。
ちなみに、琥珀さんは周りにあわせているようだった。笑顔で驚いている。むしろ、喜んでいる。











「こ、恋人ぉー?」





弓塚さんの声が裏返っている。
全身が小刻みに震えているのも解る。

「そうよ。」

その声に答えたのはアルクェイドだった。
アルクェイドに弓塚さんが問う。その声は身体を同じ様に少し震えていた。

「アルクェイドさん、恋人ならどうしてわざわざ私を連れ戻したんですか?」
「あれ? 言わなかった? 志貴のため、ついでに貴女の為だってね。」
「志貴くんの?」
「そう。」

わからない。コイツの考えはいつもわからないが、今日は更にわからない。
俺がわからないんだから、弓塚さんはもっとわからないだろう。

「貴女の亡くなったところにこの間お参りにいったでしょ? あの時に供えた花を一緒に志貴と買いに行ったの。」
「あー、それで昨日花の事を私に聞いていたんですねー?」

へー、琥珀さんとそんなやり取りがあったのか。
でも、それがどうして?

「志貴の買った花、パンジーだったよね? あれ、調べたのよ。花言葉。『想い』ってね。それで少し考えたんだけど、よくわかんないから琥珀に相談したの。」
「あれ? 相談なんてしましたっけー?」
「うん、偶然だけどね。で、結論をだしたの。ちょっと悔しいけど『好きな人が望むなら、叶えてあげよう』ってね。」
「「「「…………」」」」







流石に一同、言葉もない。
これが、アルクェイドの包容力なのか、単なる考え無しなのかはわからない。
だが、アルクェイドのこの言葉には誰も勝てなかったようだ。

「で、上手く復活できたからこれからの事も考えなきゃね。」
「これからと申しますと?」

遠慮がちに翡翠も問う。
うん、それは俺も聞きたかった。無事ならそれで良い筈じゃないのか?

「この娘、人間だと思う? 少なくとも、それ以上の力を持ってるの。確実にね。だからソレを見出して使い方を覚えないと、取り返しのつかない事になるかもしれないから。」
「なるほど、それならわかります。力に呑まれない様に訓練するわけですね?」

っと、秋葉。
流石に遠野家の事情を知っているだけに皆、理解が早い。
たぶん、弓塚さんだけがこの話に着いて来れないだろう。

「えーっと、とにかく志貴くんと一緒にいてもいいんだね?」

やっぱりわかってなかった。ま、いいんだけどね。



ごすっ!


「きゅう〜」
「人が真剣に話しているのに、何を色ボケしているんですか、貴女は!」
「って、いきなり殴るなよ、秋葉! あーあ、弓塚さん気絶しちゃったじゃないか…………」
「事情はともかく、私の気持ちが納得できません! 私に何の断りも無く………… それよりも、兄さん。伺いたい事があります。想いってどういう事ですか?」
「何の事だ?」

いきなり何を言ってるんだ? コイツは。

「とぼけないでください! 一つは今、アルクェイドさんが言ったじゃないですか!! 花、花言葉ですよ!! それとその猫の事です! 女の子を飼うだなんて下劣な!!!」













ぽん

言われて思い出し、手を打つ。
そういや、何かそんな事をアルクェイドが言ってたな。完全に聞き流していた。

「あー、あれか。レンの事は今度話す。花言葉は知らないよ。」
「知らないって、貴方のした事でしょう!?」
「だから、花言葉。アルクェイドが気を使ってくれたようだけど、俺はそんな気の利いたものは知らない。」
「えー、そうなんだ………… 志貴が喜ぶと思ったのに、がっかりだなー。」

心底、不本意とばかりに溜息をつくアルクェイド。

「いや、アルクェイドのやってくれた事はすっごく嬉しいよ。俺の事を何よりも大事に思ってくれての事だから。」
「わ、私だって兄さんの事を何よりも大事に思っています!!」

顔を真っ赤にしながら対抗する秋葉。
うーん、可愛いと言えば可愛いのだが…………

むくっ

をっ! 弓塚さん復活。大丈夫かな?

弓塚さんが秋葉の方を向いて、じっと見据える。
ソレを見て秋葉がビクッっと身を震わす。
一体何が?










「ふっ…………


















ぅ秋ぃ葉ぁ――――――――――っ!!!!!!!!」
「ひっ、ひぃ―――――っ!!!!!!」

男の声で秋葉に飛び付く弓塚さん。
ソレに悲鳴をあげて怯える秋葉。何が起こったんだ?
まるで亡霊でも見たような………… それに、今の声。何処かで聞いたような…………

「秋葉ー! 兄ちゃんは何時だって秋葉の事『だけ』を『想って』いたんだゾー!!」
「いやぁー! やめて!! 貴方なんか兄ではありません!!! 離れてー!!!!」












「…………兄ちゃん? もしかして…………四季か?」

俺の方を振り向く弓…… いや、未確認生命体。

「おう! ただいま。今帰ったぞ、親友。」
「帰ってこないでー! 御願いだから消え失せてー!!」
「そうか、そんなに嬉しいか、秋葉? 兄ちゃんも嬉しいぞ。」

嫌がる秋葉を無視して頬擦りをする四季。
うーん、見てるぶんには、女の子同士がじゃれ合っている様に見えるのだが。

「お前、秋葉の言葉を聞いてやれよ。それよりも、正気なのか?」

この際、秋葉は無視しよう……
反転した四季。一番気掛かりなのはソコである。
再び狂気に捕り憑かれたら…………

「ああ、バッチリだ。色々と迷惑掛けたな。すまなかった。」
「今も迷惑です! 離れなさい!!」
「ああ、愛しい秋葉。いつまでも、ちっちゃい秋葉を守ってやるぞ!」
「私は成長しています! 貴方など居なくても十分です! いつまでも子供のままではありません!!!」

四季はピタリと頬擦りを止めて、秋葉の胸を凝視する。

「何言ってるんだ? こんなに『つるぺったん』じゃ……(がすっ!)ぐはぁ!」

愚かなり、親友よ。反転が解けたらこんなに阿呆だったのか………… 親父も浮かばれないな。

「あのー、本当に四季さまなのですか?」

珍しく恐れ恐れと聞く琥珀さん。
いつもなら、いけしゃあしゃあと言い放つのに。

「お、琥珀か。その、何だ。色々とすまなかったな。許してくれ。」

秋葉からの打撃に殆どノーダメージの四季。恐縮そうに琥珀さんに謝る。

「そんな、許して頂くのは私の方です。私は――――」
「いや、俺だけじゃない。親父も含めて琥珀には迷惑を掛けた。琥珀が俺たちにした事は当然の報いだ。謝らないでくれ。それと、本当にすまない。」

琥珀さんの目に涙が浮かぶ。
そして、深々と頭を下げる。

「あんた、消えたんじゃなかったんだ?」

無言だったアルクェイドが四季に問う。

「ああ、あんたか。世話になったな。俺の能力は、『不死』と『共有』なんだ。だから、さつきに力を与えた時点で俺と同化したみたいだな。最も、狙った訳じゃないがな。」
「ふーん、一つに身体に二人が入ったって事か。」
「大体そんな感じだ。だが、殆どはさつきだぜ。あいつの意識が無くならないと俺は出て来れない。現に今まで俺の意識は無かったしな。」

なるほど、そういう事か。しかし、それなら…………

「なあ、さっき弓塚さんが眠っていた時にお前は出てこなかったよな? あれはどういう事だ?」
「だから、意識が無くなったらだよ。眠っていても意識はある。気絶した時だけだろうな。俺が出て来れるのは。」
「弓塚さん! 起きなさい!! 私の為に起きなさい!!!」

それを聞いて弓塚さんに呼びかける秋葉。
気絶させたのは、お前だろうが…………
















暫くして、そんな一悶着もおさまり俺はアルクェイドと一緒に弓塚さんを家まで送った。
その後、アルクェイドのマンションに立ち寄って、一緒にコーヒーを飲んでいる。






「ねえ、志貴。色々と複雑な事になっちゃったみたいだけど、怒ってる?」
「いや、どっちかって言うと感謝しているよ。」
「本当に?」
「ああ、クラスメートだけじゃなく、親友まで助けてくれたんだからな。ま、面白い形にだけどな。」
「よかった……」

弱気なアルクェイドの言葉。
その言葉と同じく仕草も弱々しい。
胸に手を当てて、ホッと吐息を吐く。

「どうしたんだ? いつもらしくない。」
「あたしねー、ずーっと一人だったでしょ? それで、人の事なんてわからないのよ。だから、今回の事で志貴が怒っちゃったらどうしようかなってね。」
「考えすぎだよ。それに好意でやってくれた事だろ? なら問題無い。ダメなら謝ればいいから、な?」
「うん、ありがとう。志貴。」

ほんのりと頬を赤らめて言う。
こっちの方が恥かしくなる。

「御礼を言うのはこっちだよ。ありがとう。」
「ううん、違うの。そういってくれる志貴の優しさに言ってるの。でも、その優しさは私だけのモノじゃないから時々つらいのよ?」
「…………そうか、すまない。そんなつもりは無かったんだがな。」
「いいよ。それが志貴の魅力だから。」

そう言って寄り添ってくる。
俺もそれが心地良くて、頭を撫でてやる。
暫くの間、そうしてじゃれていた。
『帰りが遅い!』と家で御立腹の妹の事を忘れるぐらいに。













あとがき

 さっちんファンの方。誠に申し訳無いです。さっちんの中に『いらんモノ』を『居
れて』しまいました。
 ま、只で復活させてあげる程、僕は上品な人間ではありませんのでw

 これで、『真マス』でいきなりさっちんが復活していた事の裏付けが出来たので一
安心です。
 今更ですが皆様御存知の通り、僕の作品は全てリンクしています。(って言うか、
同じ世界?)そういった意味で、これからも工夫・改善を行いないと思いますので末
永く、そして暖かく見守って頂ければ幸いであります。
 それに伴い、一部の方に御協力をして頂いたり(現在、暗躍中)僕の作品のリンク
作(違う角度から見た展開)を書いてくださった方々に心より感謝致します。





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