ようやく待ち望んでいた『日常』が始まる。
大好きな志貴くんと登校し、大好きな志貴くんと教室でおしゃべりしたり、
大好きな志貴くんとずっと一緒にいられる…そんな夢にまで見た日常。
「おはよう、志貴くん。」
「おはよう、弓塚さん…」
---夢じゃないんだよね?
それは、どこにでもある登校風景。
仲睦まじい彼氏彼女が、同じ学校に行くために通学路の片隅での待ち合わせ。
お互いがお互いに意識しすぎて、少しギコチナイのはご愛嬌。
なぜなら…四年間待ちつづけた、まさに少女の夢が叶ったような時間だったから。
---♪
とても嬉しそうな彼女の表情に『ドキッ』としながらも、自分もニヤケてしまいそうになる少年。
そんな彼氏の葛藤を知らず、益々笑顔を絶やさない少女。
某・勇気の神様も裸足で逃げ出しそうな雰囲気が二人を包んでいた。
SATSUKI 〜Then
「弓塚さん、体の方は大丈夫?」
「うん、今までより軽くなったって言うか…変な感じはするけど別にどこも痛くないよ」
「なら良いんだ。今日は日差しも強いからなんとなくね」
---心配してくれてるんだ
「えっと…昨日まではお日サマの光が『痛かった』けど今は平気」
「本当?」
「うん、前と殆ど変わらないよ」
「どこかオカシイ所があったら直に言ってね。弓塚さんまだ病み上がりなんだから…」
「ありがと、今は問題無いよ。」
---やっぱり優しいね
「ところで、今日の授業って……」
…なんて、私を気遣いつつ話し掛けてくれる志貴くん。
今までが今までだっただけに信じられないくらい会話が弾む。
---幸せ♪
「でも弓塚さんって……」
---あれ?
なんだろうこの心のモヤモヤは…。
「……んだけど弓塚さんはどう思う?」
---また…
「…ね、弓塚さん」
「…志貴くん…」
不意に確かめたくなった。
「ん?」
「どうして私の事、名前で呼んでくれないの?」
---あれ…、志貴くん困った顔してる。
「…えっと、何でだろう…特に理由は…」
「無かったら名前で呼んで欲しいな…その…」
---あなただけ、だから
「…さつき…」
「えっ?」
志貴くんは少し照れながら名前を呼んでくれた。
---この名前を呼んで欲しいのは
「あははっ、なんだか恥ずかしいね…」
「…そう…かも…」
---あなただけ
「でもさ…いつか、こう呼び合うのが普通になるよ…うんん、そうなってみせる」
「うん、一緒に成長していこうよ」
きっと『約束』だからでは無く、二人が『そうしたい』と思っている限り。
「ようー遠野、外で会うとは珍しいな」
明るい声と共に乾くんが近づいてきた。
---なんとなく邪魔されたような気もするけど…
「お前こそ、こんな時間に何の用だ?いつもは二時間目から来るくせに」
「ゴアイサツだねー、おっ…弓塚もいるじゃん。朝からレアな組み合わせだな」
---…聞き捨てならない発言があった気がするんだけど?
「おはよう、乾くん。私、今日から志貴くんと登校することにしたんだ…」
---だから『レア』だなんて言わせないもん
乾君は一瞬…いわゆる『ハト豆』な顔をしたかと思うと、急に真剣な顔になって志貴くんの顔を見つめた。
「まぢか?」
「…ああ、さつきの言った通りだ」
---今、さつきって…
「…とおのー。おにーさんは見直したぞ…ようやく、ようやく気付いてやれたのか…」
そう言ってバシバシと志貴くんの両肩を叩く乾くん。
---おにいさん?
「痛いって。ま…そう言う事だ…くれぐれも手は出さないように」
---きゃー嬉しいけど…なんて
志貴くんの発言に再び乾君は呆然とすると、涙ながらに豪語する。
「もうお前に教えてやる事は何も無い…今日からは弓塚と仲良く生きるんだ親友」
「おう、世話掛けさせたな悪友」
二人はガッチリと握手を交わす。
---良く分からないけど…男の子の友情ってやつかな?
なんとなくついていけない雰囲気だったけど、二人が本当に仲が良いことは分かる。
「で、だ有彦…くれぐれもこの事は…」
握手を解いた志貴くんが恐る恐るといった感じで尋ね…
「もちろん、全校生徒いや町内全体に広めておくから!」
…る前にトンデモナイ事を口走る乾くん。
---私としては願ったり叶ったりだけど
「なっ、お前はー」
「そう喜ぶな親友。俺からのせめてもの手向けだ」
「違う、喜んでない。いいからそっとしといてく…」
と、志貴くんが言い終わる前に乾くんは学校へと走り出した。
「またな親友。俺は先に行って皆と披露宴の打ち合わせでもしてくる」
---披露宴って…
「有彦ぉ〜…今日ほどお前と知り合った事を嬉しく思った時は無いぞ…」
そんなことを言いつつ、にわかに殺気立つ志貴くん。
---でもね、志貴くん…私達がこうなれたのも…乾君のおかげかも知れないんだよ?
「ゴメン弓塚さん…朝から騒がしくなりそうだ…」
志貴くんはすまなさそうにそう言うけど。
「うんん。良いの…皆に祝って貰った方が嬉しいし…」
---知ってる?志貴くんを狙っていたのは私一人じゃ無いんだよ…
「…皆に知ってもらいたいから」
---もう、誰にも渡さない
きっと今、私は満弁の笑みを浮かべているだろう。
その証拠に志貴くんは照れたような恥ずかしいような顔をしているから。
「そんな事より…」
---もっと大事なことあるじゃない…
「ん?」
「戻ってるよ…」
「何が?」
志貴くんは分からないといった表情で私を見つめる。
「乾くんには『さつき』って言ったくせに…もう戻ってる」
「ああ…あの時は…なんていうか……」
---ふふふ…困ってる困ってる…
「なんていうか?」
「見せ付けたかったんだ…俺の親友に」
---志貴くんって、時々トンデモナイことを言うね…
「…嬉しい」
「うん、チョット恥ずかしかったけど」
---でも、今からもっと恥ずかしい事があるかも知れないんだよ
私は思わず志貴くんの腕に飛びつく。
「さ…もっと見せ付けよう?…私達の事…」
顔を真っ赤にしながら照れる志貴くん。
---これから毎日…二人一緒にいる限り…
「そうだね…やっと、ゆみ…さつきと一緒に生きられるんだから」
そう言った志貴くんの顔はまだ赤かったけど、とても満足な…幸せな顔だった。
「…大好きだよさつき」
「…私も…大好きだよ…志貴くん」
…そのあと、教室に入った私達をクラス費で買ったクラッカーを片手に皆が熱烈な祝福をくれたのは、また別の話。
あとがき
どうも、再びお目に掛かります。仁あにぃです。
懲りずにまた書かせてもらいました。
私もハッピーエンドな話が好きなので書いていてとても楽しいです。
相変わらず進歩の無い駄文ですいませんが、皆さんのご意見ご指摘を元に精進してゆ
きたいと思います。
ここまで読んで頂いてありがとうございました。