| SHINE100話記念作品(後編) 『優しさに護られて』 |
――それは突然の出来事だった――
ガイストに捕らわれた友美を前にして、俺は固く歯を食いしばる。
人質にすると言うよりも、俺に向けて盾にしている。 このガイストは明らかに俺の事を敵だと認識しており、友美はその為に利用されているのだ。
激化する戦闘の中、今まで知人が直接巻き込まれていなかったのは、ある意味奇跡だったのかもしれない。
クライマーだという正体を隠してきたツケがくる事に怯え、考えないようにしてきた。
だが遂に同級生が目の前でガイストに捕らわれ、それだけで俺にはなすすべが無かった。
「光くん……」
微かに俺の名を呼ぶ姿は小さく震えている。 ガイスト自体は然程強くは無いのだが普通の女子高生にとっては、化け物の一言に尽きるだろう。
声を出せるだけでも大したものなのだ。
「いいよ、やっちゃって」
その言葉に耳を疑った。 友美の言葉は俺がクライマーだと言うことを前提にしている。
友美は知っていたんだ。 俺がひた隠しにしていた事を。
震えているのは身体だけじゃない。 気丈に搾り出した声も震えている。
だが、恐怖で涙を流す友美の瞳には覚悟がハッキリと見えた。 そんな友美の姿に俺は自分を恥じる。
そうだ、怖がっている場合じゃないんだ。
「ああ、わかった。 怖いだろうけど俺を信じてくれ」
「信じてるよ、光くんの事を。 だから怖くないわ」
「すぐに終わらせる。 痛くはしないから安心しろよ」
「痛かったら責任とってもらうからね」
こんな卑劣なやり方だけでも気に食わないのに、俺の知人を巻き込み盾にまで使いやがる。
許せねぇ! 一撃だ、一撃で終わらせてやる!
――光技、シャイニング・ディバイド!――
腰が抜けたのか、座り込んだ友美に手を差し伸べながら話しかける。
「……大丈夫か?」
「信じろっていったのは光くんでしょ」
俺の手をとり立ち上がる時、友美の顔が一瞬歪む。 すぐに笑顔を作るが気づいてしまった。
友美の背後に回り確認する。 俺の見えなかった位置を。
「血が出てるじゃないか」
「大丈夫よ、大した事ないんだから。」
「すまん、俺のせいで」
そういって笑ってくれる友美の背中は、服が破れて白い肌に一筋の赤い線が刻まれている。 深い傷ではなさそうだが、掠った程度というほど軽くもない。
だけど友美は怪我なんて何とも無いかのように明るく振舞い、言葉には全く出さずに涙で濡れる顔を笑顔に変える。 それがまた見ている俺には痛々しかった。
「じゃあ私の傷、舐めてくれる? 玲衣には内緒にしてあげるから」
「え、ええーっ!」
「あはは、冗談よ。 だけど、ちょっと荒っぽくてビックリしたかな」
戦いの後、俺たち二人はゆっくりと歩いてその場を後にした。 外出中の咄嗟の戦闘であった為、トランスポーターを携帯していなかったから。
歩いている間、珍しい事に友美の方から話続けてきていた。 どうでもいい様な普段の学校帰りにするような話を。
友美は俺がクライマーである事とか、ガイストがどうとかって事は一切口にしない。
寧ろ、俺の負い目を気遣うようにわざとふざけて振舞っているようにも感じられた。
とにかく俺は、とうとうクラスメイトの前でクライマーとして戦ってしまった。 以前に聞いた煌羅の言葉が頭を過ぎる。
今の友美を見る限り、そんな事にはならない気もするのだが……
「俺はTERAに戻るけど、お前どうする? 傷を診てもらった方がいいんじゃないか?」
「んー、いいわ。 私を連れて帰ったりしたら玲衣が暴れだすかもよ? 服、破れちゃってるしね」
「だったら家まで送るよ」
「そんなに気にしなくていいのに」
せめてそれぐらいの事でもしないと俺の気が済まない。 巻き込んだ事、怪我をさせてしまった事。
なのに気を使わせてしまっている今の状況。 こういう面で俺は自分の弱さを感じる。 他のクライマーの娘たちも同じような苦しみを味わっている筈だ。
友美は明るく振舞ってくれているのに、俺には同じような事は出来なかった。
友美の家に着いた時、玄関先で友美は振り返り最後に言った。
「光くん、助けてくれてありがとう。 じゃあ明日学校で。 またね」
そう。 ――またね――と言ってくれたのだ。 それで全てが旨くいった訳じゃないけど、とりあえず今は俺の恐れる事態は避けられたようだった。
俺は玲衣を巻き込んでしまう事ばかりを懸念していたが、玲衣に限らず周囲の人物も同様なのだ。 それを失念していたのは俺の落度以外の何でもない。
だがそんな俺の思惑はお構いなしに、TERAに戻った俺には別の試練が待ち受けていた。
「でね、君が戦っている間の音声が館内に流れちゃったのよ」
とんでもない事態である。 今のTERAの居住区には玲衣も住んでいるのだ。
指令の話を聞いて血の気が引いた。 だが指令は何故か嬉しそうに言うのだ。
「大丈夫よ、音声だけで映像は流れてないんだから」
他人事な言い草。 俺が怒りを露にして怒鳴りかけた時、館内放送から玲衣の声が響く。
その瞬間、爆発しかけた俺の怒りは奈落の底に落とされたように絶望へと変わった。
「光! 何処に逃げたの! 出てきなさい!」
「玲衣さん! ここは立ち入り禁止ですよ! ダメです、マイクを返してください!」
蛍ちゃんの抵抗している様子が全てスピーカーから流れてくる。 このままだと蛍ちゃんの身も危険だ。
ガイストに捕らわれた時の友美のように、俺も覚悟を決め玲依の元へ行こうとした時
「とうとう友美に手を出して! そんなに巨乳がいいの、光!」
足が止まる。 理解不能。 いったい玲衣は何を言ってるのだろうか?
首をギギギギっと後ろに回し、指令の方を見る。 そこにはいつもの笑みを浮かべた指令の怪しい顔。
「だから音声だけって言ってるでしょ。 流れたのは光くんたちの会話だけ」
「あのね光くん、これがその内容なんだけどね」
見かねたひなたさんが、プリントした会話ログを俺に見せてくれた。
友美「光くん……」
友美「いいよ、やっちゃって」
光 「ああ、わかった。 怖いだろうけど俺を信じてくれ」
友美「信じてるよ、光くんの事を。 だから怖くないわ」
光 「すぐに終わらせる。 痛くはしないから安心しろよ」
友美「痛かったら責任とってもらうからね」
――暫し雑音――
光 「……大丈夫か?」
友美「信じろっていったのは光くんでしょ」
光 「血が出てるじゃないか」
友美「大丈夫よ、大した事ないんだから。」
光 「すまん、俺のせいで」
友美「じゃあ私の傷、舐めてくれる? 玲衣には内緒にしてあげるから」
光 「え、ええーっ!」
友美「あはは、冗談よ。 だけど、ちょっと荒っぽくてビックリしたかな」
「あ、あは、あははは……」
笑みの無い笑いが俺の口から出る。 なるほど、玲衣はこの会話だけを聞いたのか。
紅梨ちゃんや蛍ちゃんは、戦闘の映像を見てただろうから誤解はしなかったと思うが、この会話だけでは誤解されても仕方がないかも。
引きつる俺の顔。 それを見てひなたさんと美樹さんの顔も引きつる。 麻実さんは何故か怪しく微笑んで俺を見ているし指令に至っては罪悪感ゼロだ。
プシーッ
司令室のドアが開かれ亜輝が俺を見るなり叫んでくる。
「光さん! 何をやってるんですか!」
「何って言われても、なあ」
「玲衣さんが暴れて居住区は壊滅しかけてるんですよ! 今、蛍ちゃんのラボが占拠されています。 早く行って光さん半殺しにされてきてください!」
さらっと恐ろしい事を言いやがる。 人を何だと思っているのか。
「お前、日に日に酷い事を言うようになってきてるよなー」
「紛らわしい会話をしたせいです! それに光さんが玲衣さんに半殺しにされるなんて日常茶飯事じゃないですか!」
認めたくない事をハッキリと言ってくれる。 俺だって好きで半殺しにされているんじゃないのに。
だが放っておく事もできず、やや俯き加減で司令室を出る。 背後から指令が『頑張ってねー』と笑顔でエールを贈っている。
友美にクライマーだという事実を知られた事で消沈していた俺の気持ちを、玲衣に違う形に誤解される事で紛らわそうとした指令の歪んだ優しさだと、その時の俺は気づかなかった。
――舞台裏にて――
ひなた 「はーい、おつかれさまー」
玲衣 「別に疲れてないわよ。 私、声だけだったし」
光 「美樹さんと麻実さんはマネキンだったぜ。 見ていて台詞噛みそうになったよ」
詩奈 「あたしなんて出番無かったじゃないの、コンチクショー」
明美 「まあ100話突破記念のイベントなんだからサラっとでいいんじゃないの? TERAのメンバーも私とひなだけだし」
光 「おいおい、俺等はTERAじゃないのかよ。 あれ? 蛍ちゃん居なかったっけ?」
ひなた 「あ、あれね。 私の声色よ。 声優志望は伊達じゃないんだから♪」
光 「まだそっちの仕事に未練あるんですね。 けどさ、俺は相変わらず玲依にボコられる運命なんだな?」
玲衣 「たまには熱くラヴラヴしてみたいよね。 あたしなんて常に野獣のような扱いなのよ。 何とかなんないのかしら」
友美 「もう遅いんじゃないかな? 何だか本編でも、たまーに出番あったと思ったら暴れてるし」
玲衣 「う、うるさいわね! 大体何よ、何で友美がヒロイン扱いなのよ! 不公平じゃないの!」
明美 「あー、それね。 通販の方で頑張ったから、そのせいじゃないのかしら? トップを飾っていたしね」
ひなた 「ちょうど良かったですね。 さっきの賞品に」
詩奈 「以前に通販のFDが出た時にイベントがあったら、玲衣もファンから何かの応援があったかもね」
玲衣 「その時点でおかしいでしょ? 何でファンからなのよ。 頑張ったら作者から御褒美があるんじゃないの? あの時はあたしのイラストもあったのよ?」
友美 「私や他の人もイラストあったけど」
ひなた 「いやー、それは無理じゃないのかな? だって本編作者は煌羅に全力を注いでる気がするし」
明美 「そうね。 FDでは光くんと玲衣ちゃんでラベルを飾っていたけど、リメイクCD版ではトップクライマー4人がトップ絵になってたもんねぇ」
玲衣 「キーッ! 今までを比べて私より絶対あの双子の中学生の方が台詞多いわよ! 差別よ、これは!」
光 「いや、紅梨ちゃんはホントに大学生だぞ。 それに双子じゃなくて……」
玲衣 「あんたは黙ってなさい! 元はあんたが悪いんでしょ! ほら、亜輝も何か言ってやりなさいよ」
亜輝 「きゃははは! 今更何いってやがんだよー、この男の甲斐性無しは生まれた時からなんだよ。 ひははははは!」
詩奈 「あー! 亜輝、また飲んでる!? 誰よ、この娘にお酒飲ませたのは!?」
明美 「うーん、亜輝は飲んだらこうなるのか。 ここまでとは知らなかったなー」
友美 「亜輝やめなよ。 3巻でその失態やってファンが減ったでしょ? これ以上やると自分の首締める事になるよ」
詩奈 「既に亜輝の人気は無いに等しいんじゃないかなー?」
亜輝 「うひひひひひ! そういうお前ぇだって彼氏の方が人気あんじゃねーのかぁ!?」
詩奈 「ぐぉぉぉぉっ! あたしがいつも危惧してる事を! それはみんなが気を使ってあたしには言わないって事になってんだぞー!」
亜輝 「うひゃひゃひゃー! 何だお前ぇ、人気だけじゃなく相変わらず乳ねぇなあー。 眼鏡かけてるくせによー」
詩奈 「てめぇ! また言いやがったな、コニャロー! 今度こそ殺してやるーーーっ!」
玲衣 「あれ? イラスト投稿のところに詩奈の絵もあるよ」
光 「お! ほんとだ。 珍しいなー」
詩奈 「え? うそ!? どこどこ?」
明美 「さっきのコンテストの記念撮影ね。 投稿者は時護って人だって」
ひなた 「……」
詩奈 「な、何じゃこりゃー!?」
友美 「よ、よかったわね。 念願の初投稿よ、詩奈」
詩奈 「どーみても友美の投稿であたしはおまけじゃなのさ! 何よランク外って!?」
亜輝 「ひゃははは、ギャラリーは正直なのさー!」
玲衣 「あー、私じゃなくて良かった」
明美 「けど、これ以上は落ちないわよ。 後は上がるだけだし」
光 「次があればの話だけどな」
詩奈 「今すぐに喜ばせてよ! こうなったら巨大ガイストになって暴れてやる!」
ひなた 「巨大化してもAカップだったらどうするの? もう立ち直れないわよ?」
光 「ついでに俺がやっつけに行く事になるだろうけどな」
亜輝 「うひひひひ! 『おい詩奈! 暴れるな、コッチ向けよ! あ、向いてたのか。 背中かと思った』ってよー!」
ひなた 「イラスト半分、ネタ半分みたいね」
詩奈 「く、くぅ……友美がイラストでネタの方が…… おのれぇ時護ー、殺してやらぁー!」
玲衣 「ねえ、次から詩奈を野獣扱いにしてよ。 私じゃなくて」
明美 「ま、そっちの話は置いといて、実際のところ今回の話ってどうだったの?」
友美 「そうですね、ああいう扱いもいいかなって思います。 本編では玲依に華を持たせる事になるんでしょうけど」
光 「でもさあ、最後は司令の手の平の上って感じだったよなー。 全くー、親の総取りかよ」
明美 「君も大人になったらわかるわよ。 何なら今ここで教えてあげましょうか?」
光 「何ですぐそうなるんだよ! もう大人ってヤダよー!」
ひなた 「玲衣ちゃん、ああなったら女として終わりだから気をつけてね」
明美 「22歳で『コ・ド・モ』なのもどうかと思うけどねー?」
詩奈 「あたしには関係の無い話だね。 若くして彼氏が出来てよかったなー」
ひなた 「よく言ったわね、沙耶香によろしく言っといてあげるから覚えてなさい。 あとメールで……」
詩奈 「ちょ、ちょっと何であたしの携帯持ってるの?」
ひなた 「『カマ臭っ! やっぱ姉のヒモだと頼りないんだねー。 期待して損しちゃった』っと。 これでOKね」
詩奈 「き、汚ねぇぞ、22歳処女ぉーっ!」
友美 「あ、その設定って事実だったんですか? 台本上のネタかと思ってました」
ひなた 「くっ! そ、そんな事いってたら光くんと玲衣ちゃんが本当に青臭い関係だってのもバラすわよ」
玲衣 「矛先を私達に向けないでよ! だから彼氏出来ないのよ、文句なら本編作者にいいなさいよ!」
明美 「さて、イベントもそろそろお開きにしましょうか。 あんた達、本編の方でもしっかり頑張りなさいよ」
友美 「わ、私は別に……」
玲衣 「本編の方でもって何? 一体何があったの?」
明美 「いや、これからなのよ」
詩奈 「違うって! 玲衣、大した事は無いんだよ。 そっか、玲衣は知らなかったんだね。 通販の時あたしらと一緒にいなかったもんねー」
亜輝 「うひひひひ! あたしなんて体張ってたのに、こいつはプールでチキンだったのさー! ひゃははは!」
玲衣 「それは双子のポニーテールでしょう!? それにあんたみたいにポンポン裸になんてなれないわよ、普通は!」
亜輝 「何だぁー? そんなに裸みたいのかぁー!」
詩奈 「やめときなって! 友美もいるんだから脱いでも恥かくだけだよ! 身体は友美の売りなんだから!」
友美 「売った覚えなんて無いわよ! それに引き合いに私を出さないでよね」
明美 「はいはい、それじゃ本編の収録に入るから準備してね。 亜輝は酔いが覚めるまでほっといていいから」
ひなた 「そうですね、TERAのみんなも待ってるだろうし」
光 「今回、締めの挨拶ぐらいは玲衣にさせてやったらどうだ?」
明美 「いいわよ。 今のところ形だけのヒロインだけど、譲ってあげなきゃね」
玲衣 「えっとー、ACT100を境に私が活躍するからみんな応援してね…… こんな感じかしら?」
亜輝 「きゃははは! 無理だよ! 全部コイツにおいしいトコ持っていかれるからよー、ひはははは!」
友美 「胸を指差して言わないでよ!」
詩奈 「あたしも指差されてみたい!」
明美 「それも無理ね。 ランク外だし」
あとがき
どうかな? ちゃんと繋がったかな?
記念投稿に当たって丁度いい作品が手元にあったので修正して投稿してみました。 これが巧くリレー作品になっていれば良いのですが。
話の方では光が敵から友美を助けようとする気持ち、友美の光を労わる優しさ。 最後に明美指令の間接的で個性的な優しさ。
この三つを起点に書いてみました。 微妙にズレたかも? 光の優しさってのも盛り込みたかったのですが立場上の流れで結果的にこのような作品になりました。
その代わりにタイトルにある『護る』って言葉にも光を掛け合わせています。 タイトルは明美さんの事を記しているのですけどね(笑)
様々な要素から現状の本編では無い筈の話になっています。 この先どうなるかは水夢氏のみが知るところですが、最後の舞台裏ってトコを付け加えた事でそれほどパラレルって訳ではなく出来たかなと思っています。
先日チャットで『こんな感じの話を考えていて……』というところから始まり、この度のリレー作品へと変貌しました。 面白い試みだと思いますし、一度やってみたかったのです。
以前にも別の作品で試みた事はあったのですが、公表したのは初めてです。
少し話はそれますが、以前にこちらでチャットルームがあったときに当時の常連たちと色々と画策していた時がありました。 考え方の違いはありましたが、僕はある種の家族であるかなと常々言っておりました。
それもバラバラになってしまった訳ですが、こうしてSHINEのイベントがある事により再び顔を合わせ参加出来るのも同窓会っぽくていいかなーって気がします。
そうして再会して協力するのも、絆の一つであるかと思います。
今回の作品にて時護氏との共闘なりました。 お互いに修正もしましたが、それぞれが持っていた主旨(ネタ?)は残したままに出来ておれば成功としておいてください。