とある部屋に、TERAの面々は集められた。天井は高く正面には大きなディスプレイが鎮座している部屋だった。いつになく真面目な司令の様子を感じ取り、厳かな空気に包まれている。
「みんな集まったわね。じゃあ、まずこちらを見てもらいましょう。ひなお願い」
「はい。ポチッとな」
 誰もツッコまない。空気を読めよ、という雰囲気にさえならない。失笑さえ起こらない。……そして、音楽が流れ始めた。

    だらっだっだだだだーーーーーーーー!!

「こ、これは」
 すぐにそれが何であるかを理解し、思わず声を出してしまった光は、司令の視線を感じ慌てて口を押さえる。周囲はそんな彼らを不思議に思いながらも、一部では声は上げなかったものの彼と同じような反応をしていた、まだ何も映さない画面に集中する。

   ロリ!! ロリ!! Oh,Rori―――――――――

 そう、その音楽とは、「マジカルメイド ホワイトピアニシモ」の主題歌だった。これはオペレータの独断によるもの、いくら大好きだといっても、そこまで公私混同はしない……はずだ、ではない。そのことは数瞬後に、今回集められた事情を知らない者はみな理解し、事情を知っていた者も含めてみな数瞬前の光のことを思い返した。



『実写版! マジカルメイド ホワイトピアニシモ』への道





   この世に変態がいる限り

   必ず舞い降りる正義のロリっ娘ーーーーーーーーーーーー

   ヒラヒラメイド服がまーーーぶーーーしーーーいーーーぜーーーー!!
 
   今日も悪者をお掃除! お掃除! Oh!掃除ーーーーーーーーー!!

 お馴染みの主題歌とともに画面に表示されたタイトル。そして始まる「マジカルメイド ホワイトピアニシモ」のデモムービー。映画版の映像も含まれている。のだが、誰も見ても聴いてもいなかった。というかそれどころではなかった。部屋中に錯乱する叫び声が響き渡り、好き勝手に騒ぎ始めた。嬌声もあったのだがそれは当人以外には知り得なかっただろう。
「光っ!」
 お馴染みのメイド服姿で、当然のようにこの場にいる、玲衣。
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――
「光君っ!」
 光との関係にいよいよ危機感を募らせ、いろいろと勉強している、紅梨。
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――
「やっぱりねえ。お姉ちゃん、光、ロリコンだって」
 姉を溺愛しているものの、光を疎ましく思わなくなってきている、煌羅。
 ―――キャー! ロリコンよー! 生ロリコンよー! ―――
「先輩。私、実は……」
 光の女などと、既成事実かのように嘯いている、閃華。
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――
「お兄ちゃん……」
 喜びに溢れ、いたいけな表情をしている、蛍。
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――
「光様ぁ……。私、私、小さく、がんばってなりますからぁ……だからもっと詰ってください……」
 すっかり自分に素直になって、歯止めのなくなってきている、葉月。
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――


 混雑する悲鳴の中、行動を開始する少数精鋭。
 どうして、光が「マジカルメイド ホワイトピアニシモ」のことを、主題歌の前奏が始まった時点でそれが何であるか分かるほど知っていたのか。その答えは自ずと分かることだろう。もちろん光の気を惹くためであるから、誰かは限られてくる。分かる範囲で調べたら一人しか該当しそうになかった。黒幕も言わずもがな。まあ、私もその方が嬉しい。おっと、口が滑った。このままでは私の正体がばれてしまう恐れがあるため、この辺りで一度口を噤もう。
「あ、はは……ふふふ……あんたを殺して、私も死ぬっ!」
 あー、良い夢を見たばかりだというのに、触覚は……え、鋭角を通り越して一つに……はならなかったもののパラレってる。
「大丈夫、お姉ちゃんは大丈夫だからっ! 大丈夫……」
 何が大丈夫なのかは、もちろん年齢的には無理である、言っている当人も分からないと思うが、まったく大丈夫そうではない。
「……まあ、私は別に」
 興味のない素振りを見せながらも、自分でもまだ上手く線引きできず、戸惑う様子が見て取れる。
「まだ15歳なの」
 落ち着いた声音、表情も別段変わっておらず、内心でどんな爆弾を落とそうか画策していたと思ったら、自爆しやがった……自爆? でもないか。ははぁ、上方修正していたのか。で、ギリギリ収まった……のかな。
「あはぁ……やぁ」
 幼女が、ロリロリ身悶えしている。これは良いのか!? いや、ダメだろ! これ以上は危険。
「お前なんかでかすぎるんだよ、って……ごめんなさい、ごめんなさい……わたし、ちいさくなりますからぁ……もっと叩いてへこましてぇ……もっと握ってちぎってぇ……くださぁい……」
 って、あー、カラオケで歌ったら、思ったより、電波ではなかった。

 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――

 局所的に発生した喧騒は、その他大勢の悲鳴とともに、しばらくの間、止むことはなかった。


 とっくに音楽は消え、画面にはタイトルのみが表示され、乱痴気騒ぎも収束し、表面上は平穏を取り戻した部屋の中、本題に入り、面々がこの部屋に集められた理由を理解した。
「それじゃあ、続き、ひなお願い」
「はい。えーと、『実写版! マジカルメイド ホワイトピアニシモ』への道、ということで、私の大好きなアニメが映画化に続いて、実写化されることになり、TERAが全面的に協力することになりました」

 ―――おー、へえ、ふーん―――

 みな好き勝手に感想を抱くものの、今のところは身を乗り出すほど乗り気にはなっていないようだ。当然のように進行の嗜好はスルーされている。
「ちょっと、みなさん、その反応は何ですかっ! マジカルメイドですよ、マジカルメイド! しかもホワイトピアニシモ! 私は、初めて、初めて司令に感謝しています。今回はアニメではなく、実写版になりますが、過去、蛮勇をふるい、他の作品で実写化されたものはありますが、成功といえるものがあるでしょうか、いやありません! なればこそ、我々の手で空前絶後の作品を作り上げましょう!」

 ―――おー、へえ、ふーん―――

 相変わらず、空気の読めなさで、一人気を吐いている人物を横目にしながら、みな適当な感想を抱く。中にはもちろんこのアニメが好き、大好きな少女もいるわけだが、だって実写でしょ、アニメならまだ、とやはり身を引いている。また、騒げる、暴れられるなら良し、と乗り気なのもいる。
「あ、あの……」
 そんな中、何とか、詳しくは触れない、復活した光が、手と声を上げた。
「光君? あ、はい、何でしょうか?」
「はい、えーと、TERAの存在って公表していいんですか?」
「…………」
 …………………………………………。
 ………………………………。
 ……………………。
 …………。
「あ、あれっ!?」
 …………………………………………。
 ………………………………。
 ……………………。
 …………。
「俺、何か変なこと言いました?」
 みな、またかぁ、本当に気がついていないのかなぁ、と溜息。
「光君、鈍感な所はそれはそれで魅力だけれど、それだけではその内、愛想を尽かされるわよ。まあ、私はいつまでも見放さないし、いつでも好きなときに言ってくれて良いのよ。何なら今ここで」
「司令っ! 黙っててくださいっ! 光君、特別にTERAの名前を出すわけでもないので大丈夫です」
「もちろんお金は頂いているわ。慈善事業もお金なしではやっていけないの。あ、でも光君は大丈夫よ。私がちゃんと養って」
「司令っ! あなたは黙っててくださいっ! ……それで、今言ったとおり、名前は出さないで協力します」
「協力、って例えば?」
「それをこれから説明します」


 一通り説明が終わり、先ほどと、興味を示さなかったのが嘘のように、打って変わって、部屋の中の混乱は最高潮となっていた。
「ということで、まず、『実写版! マジカルメイド ホワイトピアニシモ』のヒロイン、ましろ役、ひびき役を決めます。ヒロインの相手役は光君です。が」
 さらに騒ぎは加速する。
「光っ!」
 お馴染みのメイド服姿を、ところどころ赤く染めた、玲衣。
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――
「光君っ!」
 勉強が進んだ暁には、強硬手段に出るのか、紅梨。
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――
「やっぱりねえ。お姉ちゃん、光、ロリコンだって」
 光を疎ましく思わなくなり、光と(で)遊ぶことはちょうど良い、煌羅。
 ―――キャァー! ロリコンよー! 生ロリコンよー! ―――
「先輩。私、実は……」
 もうこれでいいや、既成事実、閃華。
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――
「お兄ちゃん……」
 いたいけな表情をしつつ、一気に階段を駆け上がらんとする、蛍。
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――
「光様ぁ……。私、私、小さく、がんばってなりますからぁ……だからもっと罵ってください……」
 歯止めのなくなった、一人ベクトルの異なる葉月。
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――


「み、みなさん、落ち着いてくださいっ! その前に」
 加速は止まらない。
「あ、はは……ふふふ……相手役、光が私の相手役……」
 あー、良い夢を見たばかりだからだろうか、一般人のはずなのにすっかりその気になり、触覚は……え、あれ、しょ、触覚が……ハート……。
「大丈夫、お姉ちゃんは大丈夫だからっ! 大丈夫……」
 何が大丈夫なのかは、これまたもちろん年齢的には無理である、その上、今までの行動的にも、言っている当人も分からないと思うが、あ、むしろ身体的には、光に子供扱いされているということは……。
「……まあ、私は別に」
 煮え切らない態度を示しながらも、騒げるだけで良しなのか、乗り気なのが見て取れる。
「子供ができたの」
 これまた、落ち着いた声音、表情も別段変わっておらず、内心でどんな爆弾を落とそうか画策していたと思ったらぁー! ああ!? ニヤッ、ってしたぁー!
「あはぁ……やぁ」
 幼女が、ロリロリ身悶えしている。……だから、危険だって! 私が止まらなくなります。
「お前なんかでかすぎるんだよ、って……ごめんなさい、ごめんなさい……わたし、ちいさくなりますからぁ……わぁ……あは、わたし……ちいさくなりましたぁ……」
 って、イき過ぎだぁー!

 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――
 ―――キャー! キャー! キャァー! ―――
 ―――キャアー! ―――

 止まらない騒ぎ。飽和することなく指数成長を続けて―――


「だからぁ、落ち着けって言ってるだろうがっ! 」

 ―――しーん―――

 地を出した進行に、みな表面上は落ち着きを取り戻す。
「こほんっ。その前に、甚だ遺憾ですが、知らない方もいらっしゃるようなので、アニメにおける声優さんのキャラ設定を確認します。ましろは、ベテランで実年齢はそんなに若くないけど声はすっごい幼い人、ひびきは、見た目は綺麗なのにがさつだとか料理が出来ないとか部屋を片付けない、というところです」

 ―――しーん―――

 みな、今の説明を、気に入らずに反芻しているところなのか、よくよく考えて、ぴったりだ、と思っているところなのか。アニメだけでなく実写版にも応募するつもりなのかはまだ分からない、実年齢はこの中ではそんなに若くなく、声も適している、進行の言うことを聞いたわけではないだろうが、条件反射のように叫ぶことはなく、設定は浸透して欲しいところだけれど、静かな内に、と矢継ぎ早に言葉を続ける進行。
「ちなみに光君は、ちょっとナルシス気味な甘声の人です」
「えっ!?」
 驚き、戸惑う光。そして、ヒロイン候補たち。
「光っ!」
「光君っ!」
「光が!?」
「先輩」
「お兄ちゃん……」
「光様ぁ……」
「……っ光君! はぁ、はぁ……」
 遅れ馳せに来るも、時機には間に合った亜輝。ヒロインの誰かいらっしゃらないと思っていたら、人の大勢集まるような場は苦手だったのか、今まで姿が見えなかった。……すっかり忘れていた、ということではありません。
 そして―――

 ―――キャアー! ―――

 まだまだ熱は、勝手に上がり、冷めそうにない―――


 ――――――――――――
 ―――――――――
 ――――――
 ―――
『カービィさん』
『ん……』
『おはようございます』
『ん……』
『良い夢見れました?』
『ゆめ……』
 ゆめ……わたしの夢……。
 私の夢は、叶――――――





あとがき:


 同じネタの使い回しで、半端かもしれませんが、限界です。結局ギリギリになってしまいました。と思っていたら、募集期間が延長していますが、えー、続きを書けるかどうか分からないので、やはりこれで(一応)区切りとします。
 最後のところ、全体の視点をティークル嬢、としようとしたのですが、地の文に各キャラの名前を出すなどして分かりやすくするため、このようになりました。いつのこと、どんなことなのか、叶う/叶わずは適当にお願いします。
 蛍さんでさえ12歳……。これはTERA本部には、まだ子がげふんげふん(申し訳ありません)、未登場の方々が控えていらっしゃるのでしょうか。ちなみに、僕はお姉さん好きであります。
 水夢さん、アドバイス等、ありがとうございます。他に思いつかなかったので、そのまま使わせていただきました。


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