「ん……」
「気がついたか、凛」
「こ、ここは……」
「…………開けてはならぬ扉を開けたな、イリヤスフィール」
「え、こ、言峰!? どうしてここに!?」
横浜中華街に世界一の辛さを謳う激辛マーボーを擁する店が爆誕したと聞き及び
向かう途中で秋葉原に立ち寄ったのだった。
普通の人間なら横浜に向かう途中で秋葉原にふらっと立ち寄るのは至難の業だが、
そこはさすが言峰綺麗と言えるだろう。
凛は地面に叩きつけられる寸前、言峰に助けられていた。
「じゃあ、この騒ぎの原因はイリヤの髪だっていうの」
「おそらく戯れについんてーるにしてしまったのだろう。だが魔術師にとってついんてーるは
常人のそれとは違う。考えなしにしていいものではないのだ」
もはや竜巻じみた魔力の奔流は空遥か彼方まで覆い尽くした。
地球そのものが鳴動するような凄まじい地震が辺りを襲う。
「気付いていると思うが、お前の魔力の真の根源はついんてーるだ。
そのついんてーるが、類稀なる才を持つお前の力を尚且つ100倍にも高めている。
だが、ろりついんてーるは別だ。封印指定の対象でありながら誰一人遂行しようとしない
禁忌の力。分かるか、世界中の代行者の力を総動員した所で、ろりついんてーるは破れぬ。
何故なら、完璧なまでにろりついんてーるを極めたものは、無限という名の力の恩恵を受ける」
つまりはあり得ざる方程式。もはやこの世にあってはならない魔の数式だった。
時として普段寡黙な少女が恥らえばその時普段の倍以上の破壊を相手にもたらす。
時として幼女がブルマを使いこなした時、20倍もの力が放たれる事がある。
単純な付加要素。だが同時に奥深き未知の領域。それらはまだ多少は理解できよう。
そして、その中にあって遥か異端の存在。全てを超越したその上のない最後の到達点。
足し算も引き算も、掛け算すら意味を持たない。それは、机上の空論でしかない∞という記号。
ろりついんてーるは、まさしく無限の力の具現。メビウスの環を体現した唯一。
記号にして表すのは簡単だが、現存するはずがない。しかし、もしあったとしたなら。
その力を手にする者が現れてしまったとしたら――――。
「そっか。∞に何を掛けようが引こうがそれは無限。無限の力を手にしてしまったら、
外側からどれだけの力で干渉しても一切関係ないって事か。ホント、反則よね」
-------------------------------------------------------------------------------
人の力を高める要素は単に武装や叡智に限った事ではない。
その者の性格、言動、身に付けた服、髪型すらも時として恐るべき脅威たり得る。
本人が意図せずともその輝きは大いなる力となり戦いを左右した。
古来より特に女の魔術師はいかにこの付加要素を我が物にするかで優劣を競った。
中でもその最高峰とされたのがついんてーるであり、その究極がろりついんてーるであった。
もはや神に等しきその力を手に出来たのはごく僅かであり、身の程も弁えず卑しくも
ついんてーるに手を伸ばした雑多な魔術師は、神の怒りに触れたかのようにことごとく頭髪を
失ったという。
ちなみに現代でも、代表的なコンピュータ部品製造会社が、発足の際その叡智に
あやかろうとついんてーるから名を戴き、「インテル」という社名にした事で、業界でもはや
不動の地位を確立した伝説的逸話は誰もが知る所であり、まさにこの神話の生き証人と言えよう。
夢水書房刊 「黄金のろりついんてーる伝説・熱き血潮の幼女達」
「その組織、凄絶につき 〜我が名はゲイツ〜」 より参照抜粋
-------------------------------------------------------------------------------
「お前がどれだけ策を弄した所で、ろりついんてーるには絶対に勝てぬという事だ。
如何な魔術師とて、魔法使いであったとしても太陽はその手に出来ぬ。
だがろりついんてーるとはあの母なる光に匹敵する究極の力よ。
凛よ、お前は人の身でありながら太陽に挑めるか。ろりついんてーるに挑めるか」
「世界なんて私の知ったこっちゃないわよ。ただ、私の恋敵になるっていうなら……
太 陽 が相手でも戦うわ」
その瞳に、いささかの気負いも迷いも無い。
太陽に挑むと宣した凛の背中に、言峰は淡々と語りかける。
「私もかつてはろりついんてーるを愛した……。だが、心の渇きは癒せなかった。
凛よ、お前は過つな。何のためについんてーるたるのか―――」
自分も過去ろりついんてーるだった気がするが、深く考えると恐いので頭に浮かんだ
考えを振り払う。
元ろりついんてーる・現ついんてーるの自分。
だが元という肩書きに何の付加価値もない。
今や地上を滅ぼさんばかりの勢いで加速する最強のろりついんてーる・イリヤ。
だがあくまで戦うべき相手は恋敵。世界を破滅に導く破壊神ではない―――――。