オリジナル小説 -SHINE-






Addition ACT 45.5

ほとんどクライムが使えない、落ちこぼれ的な存在から、一気に主戦力の一人へ。
 皇閃華が見事覚醒、輝かしい戦果を上げた事実上のデビュー戦から、1週間が経った。
 弱さも強さも見せ、仲間達と思いを分かち合った、はずなのだが……。

「どーーして閃華ちゃんが裸で光君の前にいたのっ!!」
「……着替えただけ。あの後先輩と特訓だった」
「ちゃんと更衣室で着替えてよっ! 光君男の子なんだよっ!!」
「知ってる」
「余計に悪いよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「いや紅梨ちゃん、ちょっと落ち着いて……」
「光君は静かにしてて!!」
「……はい」

 閃華は、食堂で紅梨に詰め寄られていた。
 例によって光との特訓を逸った閃華は、更衣室に寄るのももどかしくトレーニングルームの目の前で服を捨てて着替え始めたようなのだが、今回はそれが光の目の前だったらしい。
 それを目撃した紅梨が怒っていたのだった。
「わざと見せたわけじゃない。ちゃんと先輩は後ろを向いていてくれた。紳士」
「そういう問題じゃないよぉ!!」
「脱いだのは私。あなたには関係ない」
 とうとう黙っていられなくなったのか、煌羅まで割って入る。
「あんたが痴女紛いの真似してるからお姉ちゃんが注意してんでしょーが! ちゃんと聞けこの能面!!」
「私だって誰かの迷惑になることをしたら謝る。でも、この事で迷惑をかけた人はいない。ちょっとはしたないのかもしれないけど、あなたにそこまで言われる筋合いはない」
「〜〜〜〜〜〜〜〜!!」
 ううう、と唸る紅梨。
 8割以上は嫉妬だ。その場に光がいなければ、基地の入り口で全裸で仁王立ちしていようが文句を言うつもりはない。最低限の注意をしこそすれ。
 しかし、閃華は自分の光への気持ちを知っていてこんな態度を取っているのだろうか。

「紅梨ちゃんも閃華もそのくらいにしておけって」
 見かねた光が仲裁に入る。
 自分が当事者だということには気付いていないのだろう。
「こういうことはきちんとしなきゃ駄目なの! お姉ちゃんの私がちゃんと注意しないとっ!!」
「うーん、なあ、閃華、お前の言う通りこんな剣幕で注意される必要はないかもしれないけど、でも紅梨ちゃんの言う通り、着替える場所はちゃんとしなくちゃ駄目だ。そこはここできちんとしておこうぜ」
 こくりと頷く。
「……先輩の方が大人。わかった、先輩に免じて私が折れる」
「何言ってんのよこれはただ甘いだけだっての! 誰がどう聞いたってあんたが悪いでしょうがーーー!!」
「お前なあ……」
 せっかくまとまりかけていたのに、煌羅がわざわざ混ぜっ返す。
「もう話は終わった。尚更あんたの出る幕じゃない」
 そっけなく言っているだけなのだが、皮肉に聞こえたのだろう、煌羅がのっしのっしと肩で風を切りながら閃華に近づく。絶滅危惧種の昭和ヤンキーを彷彿させる。
「ふん、なぁんか少し強くなって調子に乗ってるみたいだけど、ここらで少し上下関係をはっきりさせておいた方がよさそうね」
「煌羅、それはちょっと悪役っぽいよ……」
「望むところ。この前と違ってもう条件は対等。力づくで来てみればいい」
「よく言ったわ! 対等かどうか……見せてあげるわっ!!」

 言うが早いかぶつかり合う二人。
 互いに武装こそ出していないものの、明らかにクライムを解放したどつき合いだった。
 技でいえば閃華の圧勝だろうが、クライムを込みにすれば一日の長である煌羅が優勢になる。
 本気の喧嘩ではないにしろ、キーキー言いながらのもみ合いが3ランクほどアップしたような光景だった。
 ……もみ合い?
「また、あんたはっ……どうして女のくせに……!!」
「なーに、閃華ちゃんは男になら揉まれてもいいのー? 何で胸が2つあるかわかんないの!? 女だって女の子のおっぱいは揉みたいからよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 揉み”合い”ではなく、一方的に閃華が揉まれていた。
 一日の長云々より、ハナからセクハラ目的の煌羅が気迫勝ちしている事の方が大きそうだ。

 また始まった、と呆れ、厨房の調理師達がぞろぞろと食堂を退室していった。食事をしていた人もだ。
 ほとぼりが覚めるまで待つつもりだろう。

「もーーーーーーーーーーーーーーーー! やめさい、怒るよーーーーーーーーーー!!」
「妹をいい加減にさせてっ……!!」
「ムカつくけど……おっぱい柔らかいじゃないのよこの! 明日からも何かしら因縁つけて揉むわ!!」
 およそ考え得る限り最低な喧嘩の売り方だ。
「おーい二人とも……」
 壊れた椅子やテーブルの破片がびゅんびゅん飛んでくる。
 もにゅんもにゅん形を変える閃華の胸に目を奪われている場合ではない。
 レイセイヲヨソオウンダ。
 ふう〜う、とわざとらしく溜息をついて、そろそろ本腰を入れて止めようかと光が思った矢先、

「いい加減に…………しなさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」
 スカーレットグレイブを解放、出力を抑えたボルテックスクリーヴァを二人に直撃させた。
「いたあ!」
「っく……!!」
「このまま暴れてたらここがメチャメチャになってみんなに迷惑かけちゃうでしょお!!」
 皮肉というか何というか。
 紅梨が二人にそう言ったまさにその時。
 着弾したボルテックスクリーヴァが弾け、厨房へ飛んでいき――――――

「え?」
「ん?」
「へ」
「あ」

 4人が白光に包まれる。

 食堂が、大爆発したのだった。